アポなし!新業態チェック(165)「天ぷらてんや」平塚田村店
●「てんや」がファミリー向け新ブランド 郊外ロードサイドの独立店で、高単価な天重や御膳メニューを導入
昨年の暮れ、ロイヤルホールディングス傘下のテン コーポレーションが、「天丼てんや」の派生ブランド「天ぷらてんや」の1号店を神奈川・平塚に出店した。従来の「天丼てんや」は、クイックサービスの天丼専門店として鉄道沿線の駅前立地を中心に出店してきたが、「天ぷらてんや」は幹線国道に面した駐車スペースのある独立店舗であり、ファミリー層などにターゲットを広げた業態だ。
同店では、客層に合わせてメニューが大幅に変更された。定食がなくなり、「彩り天ぷら御膳」(1280円)と「満腹御膳」(1380円)という2つの御膳、「天然大海老天重」と「宗像大穴子天重」(各1580円)という2つの天重が登場。天丼はアイテム数を減らし、「元祖オールスター天丼」(630円)のように、内容と価格帯が変更されている。単品の天ぷらはほぼそのままだが、「元祖オールスター天盛合わせ」(550円)や「海老天盛合わせ」(730円)など、「盛合わせ」のバリエーションが豊富になった。そばとうどんは、「石臼挽きそば」と「手延べ勝りうどん」(温・冷、各500円)にグレードアップされ、ご飯は「鶏めし」(250円)も選べる。サイドメニューも増えて、キッズメニューとして「おこさまハンバーグ」「おこさまカレー」(各550円)も用意されている。
すでに同ブランドの2号店が栃木・宇都宮の商業施設に出店しており(1号店とは一部メニューが異なる)、今後は郊外立地への出店や業態転換を強化していく計画であるようだ。
(価格は税込み)
★けんじの評価 従来店との差別化がやや中途半端か
テン コーポレーションは今年1月、グループ内の統合により成立したロイヤルフードサービスに吸収合併された。「ロイヤル」「てんや」「シェーキーズ」といった外食ブランドは、現在すべて同社が運営している。
同店が出店したのは、神奈川県の中央部を南北に走る国道129号線のロードサイド。周辺は郊外型チェーンストアや大型の商業施設が林立する流通・外食の集積地だ。すでにブランドを確立した「てんや」に、ファミリー向けのアップグレード業態を加えようという考えは理解できる。しかし、商品の価格帯を引き上げるためにはトータルなブランド政策が必要だろう。同店は意匠やカラースキームこそやや異なっているが、店舗の構造やロゴマークなど、基本的に従来の郊外型店舗と大きなイメージの違いはない。店内には従来の「天丼てんや」と同じようにオープンキッチンに面したカウンター席があるのだが、1200~1500円超の料理を、あのカウンターで一人で食べたいというお客は果たしているのだろうか。同店には、ファミリー客が少しぜいたくな食事を楽しむときに望むような、従来の「てんや」店舗とは異なった余裕のある店内外の雰囲気が不足しているように思える。
実際、すでに宇都宮の2号店ではメニューがかなり変更になっており、メニュー価格もやや引き下げられているようだ。同店のメニューもいずれ変更されるのかもしれない。二兎を追うような中途半端な業態の転換では、多くの顧客の支持を得るのは難しいだろう。
◆外食ジャーナリスト・鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。
●店舗情報
「天ぷらてんや」平塚田村店
開業=2020年12月25日/所在地=神奈川県平塚市田村5-8-38
編集協力:株式会社イートワークス
http://www.eatworks.com/