クローズアップ現在:回転すしチェーン寡占化の兆し スシロー快進撃

2021.06.07 508号 06面
都市型店舗の出店を積極的に進める「スシロー」

都市型店舗の出店を積極的に進める「スシロー」

「スシロー」では自動土産ロッカーの導入でテイクアウト売上げを伸ばしている

「スシロー」では自動土産ロッカーの導入でテイクアウト売上げを伸ばしている

蔵のイメージでブランディングする「くら寿司」

蔵のイメージでブランディングする「くら寿司」

「くら寿司」ではDX対策を業界に先駆けて進めている

「くら寿司」ではDX対策を業界に先駆けて進めている

テイクアウト・デリバリー強化を展開するカッパ・クリエイトの「かっぱ寿司」

テイクアウト・デリバリー強化を展開するカッパ・クリエイトの「かっぱ寿司」

レーンのない寿司店の先駆けとなる元気寿司の「魚べい」

レーンのない寿司店の先駆けとなる元気寿司の「魚べい」

 回転寿司株式公開企業4社の決算はスシローグローバルホールディングス(2021年4月よりFOOD&LIFE COMPANIES)が売上高前期比2.9%増、税引前利益同26.6%減。ほかの3社はコロナ禍で客数が減少し、減収減益ないし赤字計上となっている。各社とも「非接触」やテイクアウト・デリバリーを進めていて、スシローとくら寿司が都市型をはじめとした新しい出店を推進。さらに、スシローの好調ぶりが際立ち、寡占化が顕在化している。

 ●非接触サービス、都市型出店進む

 スシローグローバルホールディングス(21年4月よりFOOD&LIFE COMPANIES)は20年9月期、感染予防対策を徹底すると同時に、セルフレジを6月末に全店舗導入し、自動土産ロッカーを5%強の店舗で、自動案内を10%弱の店舗で導入した。デリバリーは外部事業者との取り組みのほかに自社便も開始。近隣のスシロー店舗で調理した商品を毎日配送するサテライト方式によるテイクアウト専門店の展開を期間限定で開始。国内出店50、退店5で国内総店舗数586となった。21年9月期の第2四半期では、前期比売上高10.1%増、同営業利益59.2%増、同税引前利益57.5%増、同当期利益52.7%増となった。この好調な背景は上半期に24店舗出店したこと。内訳はロードサイドのほかに、都市型5店舗、“スシローTo Go”と呼ばれる持ち帰り専門店3店舗を出店し、新しい顧客を発掘している。4月から京樽が傘下となり、上方寿司のテイクアウトや都市型で小型回転寿司店の海鮮三崎港が加わり、寿司市場を網羅していく。

 くら寿司では外食業界に先駆けて感染予防対策を実施、20年5月には全店舗でレジ前および座席間に抗菌シートを設置、10月には2店舗でお客が入店から退店まで店員と接触しない「完全非接触店舗」のテスト稼働を開始。21年10月期以降にオープンする店舗では全店舗を完全コンタクトレス&タッチレスの「スマートくら寿司」としていく。また、1月に初の都市型店舗となる「渋谷店」「西新宿店」を同時にグランドオープン。このタイプはその後「武蔵小杉店」「小岩店」「赤羽駅東口店」「道頓堀店」「高田馬場駅前店」と出店が続いている。

 これらの都市型店舗では通常型店舗の標準的な1皿がスシローで100円(税別)に対し120円、くら寿司が100円に対し110円と高く設定して高い家賃を吸収、また車利用を前提としないことから勤め帰りの人のアルコール需要を想定し、品揃えを豊富にしている。都市部では大型居酒屋チェーンやアミューズメント施設が撤退する傾向にある中で、出店事例は増えていく見込みだ。

 カッパ・クリエイトの回転寿司事業「かっぱ寿司」ではテイクアウト・デリバリー強化を図りWeb・アプリ注文限定の20%オフキャンペーンを実施、デリバリーでは外部事業者を活用し全体4割の127店舗で実施した。

 元気寿司ではクレジットカードからチャージが可能なオリジナル電子マネー「スシカ」を作成しキャッシュレス決済を推進、セルフレジなど、自動案内機、非接触オペレーションへの投資を強化した。

 スシローの寡占化は勢いを増していきそうだが、その他も非接触などのロボット化、キャッシュポイントの開拓に余念がない。ファミリー外食のボリュームゾーンである回転寿司が外食の新しいスタンダードを創りつつある。

 (フードフォーラム代表 千葉哲幸)

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