メニュートレンド:どっちにする!? 2種類の郷土料理で鯛を堪能
魚料理を提供する店では利益に占める酒の比重が大きく、コロナ禍で苦しんでいる店が多いものだ。大阪の「鯛専門店 徳ます」は、あえて酒に頼らない食事主体の店づくりを行い、オープン以来好調に集客を重ねている。ベースになる鯛のうまさと、2種類の鯛めしを楽しめる設定が評判を呼び、昼ににぎわう店として成長中である。
●追加料金なしで刺身の枚数選べる 締めも2通りの楽しみ方
2020年オープンの同店は、“鯛がなくなり次第終了”。昼休憩なしで営業し、平日のランチタイムはもちろん土曜日は必ず行列ができる人気店である。
店の軸になる鯛は、愛媛県産の養殖魚。宇佐泰右店主の養殖業を営む実家から直送される食材だ。中間マージンが削減でき、安心感ある味や品質が魅力である。「天然物に近づけたいとこだわって育てており、甘味や弾力があり姿も美しい。子どもの頃から親しんできたおいしい鯛を提供したい」と、宇佐店主。
有馬温泉の旅館や銀座ろくさん亭で修業し、居酒屋業態で経営を学んだ後に独立。コロナ禍の前から考えていたのは、酒ではなく食事がメインの店づくりだ。開業はコロナ第3波の頃だったものの、“勝機あり”と出発した。酒類は用意しているが、ほとんどの客は食事のみの利用。滞在時間は長くても20分ほどで、回転よく提供できるという。
人気は、愛媛の郷土料理を同店流にアレンジした2種類の鯛めし。いずれも鯛の刺身が付いているが、「鯛めしを出す他店ができないことをやり、差を出したい」と、枚数を選べるスタイルを考案。“並7枚・増し10枚・増し増し12枚”から選べて、追加料金も不要だ。多くの客が“増し増し”を選ぶとかで、たっぷりと堪能できる。
さらに、地元では尾頭付きで炊く松山鯛めしだが、骨の混入を防ぐために身だけを入れた炊き込みご飯を用意。鯛の頭から6時間かけてとるだしで炊き、コメの一粒まで味が入るように工夫している。
締めは、「宇和島」は卵かけご飯、「松山」は鯛の炊き込みご飯に前述のだしをかけてお茶漬け風の楽しみ方を提案。初体験の食べ方に感心する人も多く、2人で来店して2種類を食べ比べる姿も見受けられるとか。
客の年齢は幅広く、女性が6割。コロナ過でも大きな影響を受けず、リピーターを増やしている。将来の目標は、関西でもう1店舗の出店。さらに、通販事業にも取り組みたいという。
●店舗情報
「鯛専門店 徳ます」
所在地=大阪市西区江戸堀1-17-4/開業=2020年10月/坪数・席数=36坪・34席/営業時間=11時~20時(土曜は15時)※鯛がなくなり次第終了。日・祝休/平均客単価=1300円
●愛用食材・資材
「無添加麦みそ」マルマサ醤油(愛媛県南宇和郡)
コクのある甘味
「愛着があり納得できる地元の食材を使いたい」と宇佐店主が取り入れているのが同品。国産原料100%で、化学調味料や保存料などは無添加で製造している。同店では主に味噌汁に利用し、小鉢の調味料としても活用。コクのある甘味で、優しい味わいの味噌汁に仕上がり、健康志向が高い女性客にも好評だ。
規格=写真手前・カップ入り750g、同奥・業務用4kg
【写真説明】
写真1:「松山」は、注文を受けてから炊く鯛のあら炊きと鯛の炊き込みご飯付き。「宇和島」のご飯は+200円で鯛の炊き込みご飯に変更可。鯛造り(写真は増し増し12枚)・小鉢2種(取材時は「新タマネギとキンカンの和風サラダ」「鯛の茶碗蒸し」)・味噌汁・香の物は共通