話題の新種:東京農大「農大和牛」開発 赤身と肥育の向上を両立

2024.04.01 542号 07面
研究開発した岩田尚孝教授学科長と試食調理を担当したKIHACHI創業者・熊谷喜八シェフ

研究開発した岩田尚孝教授学科長と試食調理を担当したKIHACHI創業者・熊谷喜八シェフ

食肉のプロからも高評価

食肉のプロからも高評価

 ●褐毛と黒毛を交配

 東京農業大学は赤身品質と肥育効率の向上を両立させた和牛新種「農大和牛」を開発。このほど世田谷キャンパスに食肉関係者ら約60人を招き試食会を行った。

 農大和牛は、比較的安価な餌で育つ褐毛和種の精子と、肉質に優れる黒毛和種の卵子を交配させた体外受精卵から誕生。生まれた子牛を国産牧草だけで肥育し、良質な赤身と健康的な低脂肪を実現した。一方、牧草肥育は成体に達する期間が短く、従来の半分程度・約18カ月で出荷できる利点もある。また、飼料と手間を軽減できるため、経費高騰や人手不足など肥育農家の課題にも応えられるという。

 開発したのは農学部動物科学科・岩田尚孝教授学科長の研究班。岩田氏は「約20年前から学生と一緒に体外受精卵を試作し毎年数頭の和牛を肥育。その中から今回の農大和牛が誕生した。牧草肥育とは思えない赤身のおいしさが特徴です」と説いた。

 試食会の調理を担当したKIHACHI創業者・熊谷喜八シェフは「一般的に肥育期間が2年以内だとうまみがのらず、牧草肥育だと香りのよさに欠ける。農大和牛はその常識を覆したと思う。研究開発の成果に敬服する」と感想を述べた。

 東京農業大学は「この育成技術を全国各地の生産者に提供し、国産牧草だけで肥育する農大和牛の普及を図りたい」と発信している。

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