デリカの「今」がわかる中食通信:売れてるご当地デリカ惣菜弁当100選(2)マルト
福島のオールスターが集結! 福の恵みごでっちり唐揚げ 219円(税抜き)/1本約40g POINT:人気定番と地産地消のコラボ 強いニンニク味が好まれる地元の味覚に合わせ、ニンニクを利かせたお酒にもご飯にも合う一品
◆定番惣菜から専門料理に飛躍 愛されすぎている主力3品
福島県いわき市を拠点とする「マルト」(37店舗)は、1964年の創業時から「地元食材を使った体に優しい料理を」という思いで惣菜を作り続けてきた。いわば「もう一つの家庭の味」である。
だが東日本大震災後、地域の食生活を守るため「大量製造の安売り」に傾倒。しばらくは地元客から感謝されたが、復興が進むほど客足は大手スーパーに奪われた。その危機を脱するべく「日本一おいしい惣菜を作る」を社員一丸で共有。2019年「定番惣菜を専門料理に高める」という目標を掲げた。
幸いにも看板商品の餃子、焼き鳥、カツ丼は好調を維持。この3品を中核に品質強化を推進した。デリカ部門の全店年商は改善前の51億円から60億円に復活。全年商に占める惣菜比率は15%に跳ね上がっている。
【写真で見る】ご当地デリカ(惣菜弁当)100選 福島県「マルト」
●カツオ文化が「ニンニク5割増」を育む 「もちもち」と「ザク切り」が絶妙に調和
「ジャンボ餃子[4個]」 280円(税抜き)/1個約45g
POINT=皮も具材も当日夜中に製造
マルトといえば餃子。餃子といえばマルト。そう言わしめるほどマルトの「ジャンボ餃子」は地元に根付いている。年間販売数は380万個以上(全店)。
おいしさの決め手は、普通の餃子に比べ5割増も投じるニンニクだ。地元の小名浜港は全国屈指のカツオ水揚げを誇り、古くからカツオ料理が盛況。その薬味に使うニンニク風味が食文化に根付いており、餃子もパンチあるニンニク風味が大人気なのだ。
また、モチモチと口当たりよい皮の食感も自慢だ。これは当日製造ならではの新鮮さが先立ってこそ。餃子の皮も具材も毎日深夜に仕込まれ、夜中に製造した包みたての生餃子が毎朝各店に出荷される。そして焼きたての餃子が惣菜売場に陳列される。餃子は冷凍保存と相性がよいので、スーパーの惣菜では業務用冷凍餃子を仕入れて商品化するケースが多いが、マルトはそれを否とする。
モチモチ食感を演出する皮の厚さは、普通の餃子の倍の約2mm。その心地よいモチモチ食感は冷凍保存では再現できないという。さらに普通の約1.5倍・1個45g(相場の倍)のボリュームも大人気。具材はキャベツ、ニラ、豚肉、玉ネギで,国産原料にこだわる。いずれも食感が生きるよう大きめにザク切りしており、具材の存在感が際立つザク切り食感が味わえる。
◇(有)磐城飯店がマルトの協力工場に24時間稼働1日1万個以上製造
ジャンボ餃子の発祥は1995年。「餃子ライス」で有名な地元の繁盛店「磐城大飯店」にマルト専用餃子の製造を依頼して誕生した。以後、独自のおいしさを追求してリニューアルを繰り返し、現在のジャンボ餃子が完成。それが大ヒットすると、磐城大飯店は本業どころではない多忙な状況に。ついには店を閉めてマルトの餃子製造工場に転換することを決断した。現在は新工場を立ち上げ、屋号も「磐城飯店」に改名。全30人のスタッフが3交代で24時間稼働し、1日に約1万2,000個のマルト餃子を製造している。
●専門店さながら店内で手焼き
「焼き鳥 もも/ねぎま/ニンニク/皮/レバーつくね/ポンジリ/白モツ」[3本] 330円(税抜き)/1本約40g
POINT=2種類のタレを使い分け
年間販売数400万本以上(全店)の看板商品。専門店の味を忠実に再現するため、店舗厨房の特設グリラーで一本一本、手焼きしている。焼きながらドブンと下味を付けるタレと、焼き上がりに絡めるタレの2種類を使い分け、本格かつ絶妙なタレ風味を演出。売れすぎて調理が追いつかないこともあるが、スチコン導入の考えは一切なく、ならば「グリラーの台数を増やそう」というのがマルト流。手間を要しても味優先のポリシーを貫いている。
●創業以来のロングセラー
「ダシ香る!三元豚ロースかつ丼」450円(税抜き)/約430g
POINT=昔ながらの大鍋調理が健在
1964年の創業当初からある。「スーパーでカツ丼を売ったのは当店が最初かも」(同社広報)と言わしめる自慢のロングセラー。
醤油の濃度を変えたり、だし感を強めるなど、味覚は節々にリニューアルしているが、大鍋で作る昔ながらの調理方法は健在。店内厨房で豚カツを揚げ、大鍋で一度に6食分のカツ煮を作り、大盛りご飯にトッピング。これで税抜き450円なら買わない手はない。地域に貢献する実直な理念を如実に感じる名物だ。
●福島のオールスターが集結!
「福の恵みごでっちり唐揚げ」219円(税抜き)/1本約40g
POINT=人気定番と地産地消のコラボ
独自の下処理で「冷めても軟らかく」なるよう仕上げた国産鶏むね肉の唐揚げ。とはいえ、もはや軟らかさの訴求は珍しくない。
そこで、会津の「ちからにんにく」、中通りの「桃ピューレ」、浜通りの「又兵衛の酒粕」と、福島三大エリアの食材を活用して付加価値アップ。まさにマルトの地元愛を凝縮した鶏唐揚げである。
もちろん浜通り独特の力強いニンニク風味も健在。人気定番と地産地消のコラボは地元客の琴線に響くこと請け合いだ。
◆店名=マルト(本社・福島県いわき市)
惣菜売上比率15%
◆社名=(株)マルト/本社所在地=福島県いわき市勿来町窪田十条3-1/設立=1964年/店舗数=37店舗/年商=878億円(グループ連結)/従業員数=約4,800人(うち正社員約900人/会社概要=福島県いわき市を拠点に食品スーパー「マルト」(37店舗)、「酒のマルト」(5店舗)、「くすりのマルト」(32店舗)、調剤薬局(27店舗)、ファミリー衣料(8店舗)などを展開する地域密着型量販店。
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