クローズアップ現在:大盛り上がりのフードフェス 集客が見込める「強いメニュー」とは

2025.10.06 560号 07面
9月に東京・日比谷公園で開催された、肉好きの、肉好きによる、肉好きのための祭典「肉祭2025」の様子。ステーキや串料理、蒸しタン、ケバブなど多彩な肉料理が並び、ダンスコンテストやライブステージを開催。大盛況となった

9月に東京・日比谷公園で開催された、肉好きの、肉好きによる、肉好きのための祭典「肉祭2025」の様子。ステーキや串料理、蒸しタン、ケバブなど多彩な肉料理が並び、ダンスコンテストやライブステージを開催。大盛況となった

肉グルメのイベントは集客力も高い。福岡・北九州で開催される「食肉祭 × WAGYU FES」で毎年大好評の「牛の丸焼き」は、イベント開始前から長蛇の列ができる人気ぶり。今年もイベント期間中の3日間、毎日1,000人に牛の丸焼きをその場でカットし、無料でプレゼントする。今年の開催日は10月11日~13日。会場は「あさの汐風公園」

肉グルメのイベントは集客力も高い。福岡・北九州で開催される「食肉祭 × WAGYU FES」で毎年大好評の「牛の丸焼き」は、イベント開始前から長蛇の列ができる人気ぶり。今年もイベント期間中の3日間、毎日1,000人に牛の丸焼きをその場でカットし、無料でプレゼントする。今年の開催日は10月11日~13日。会場は「あさの汐風公園」

ドイツ・ミュンヘンで開催される世界最大級のビール祭り「オクトーバーフェスト」を再現したイベント「オクトーバーフェスト2025」が、今年も東京・芝公園(御成門駅前)とアーバンドックららぽーと豊洲の2会場で同時開催。今年も9月上旬に開催され話題を呼んだ

ドイツ・ミュンヘンで開催される世界最大級のビール祭り「オクトーバーフェスト」を再現したイベント「オクトーバーフェスト2025」が、今年も東京・芝公園(御成門駅前)とアーバンドックららぽーと豊洲の2会場で同時開催。今年も9月上旬に開催され話題を呼んだ

ミュンヘンのオクトーバーフェストの様子

ミュンヘンのオクトーバーフェストの様子

 各地域で開催されるフードフェスは、景気動向や気候変動にかかわらず通念において賑わっている。私事だが、先日、グルメバーガーの日本一を決めるコンテストの決勝の審査員として参加した。今年で5回目になるそうだが、年々客数が伸びているという。ハンバーガー以外にも、餃子フェスやラーメンフェスなどが定番だ。このように一品メニューでフェスティバルが成立するメニューがある。単品だけで集客できるのはすごい力といえる。では、どういったメニューに人は引き付けられるのだろうか。収益が見込めるメニューに定義はあるのだろうか。

 ●ハンバーガーの一例

 筆者が審査員として参加した「JAPAN BURGER CHAMPIONSHIP 2025」は、日頃からグルメバーガーを提供している店舗のシェフが出場する大会で、優勝するとアメリカ本土で開催される世界大会への出場資格を得ることができる。何より優勝した店の客数、売り上げは「とてつもない!」ことになるらしい。

 ほかにもハンバーガーの選手権はいくつかある。例えば、ハードロックカフェ主催の「ワールドバーガーツアーコンテスト」では、世界中で150を超えるハードロックカフェ各店が、その土地や文化の特色を盛り込んだオリジナルご当地バーガーを競う。スタッフのモチベーションアップにもなるため、結果として売上げにもつながっている。ハンバーガーは力量のあるメニューだ。

 ●一品でフェスが成立するメニューとは

 フードフェスティバルはいくつかカテゴリーに分けられそうだ。ひとつは「タイ料理フェス」など国や地域をテーマにした多種類の料理を出店するフェス。次に「肉フェス」「魚フェス」など食材にテーマ性をもたせてさまざまな料理を出すフェス。魚フェスから魚嫌いを克服した人も少なくない。そして、「ラーメンフェス」「餃子フェス」など料理をテーマにしたフェスがある。

 一品料理のフェス以外は、食べたことのない料理や知らない料理に出合う可能性も高い。かたや一品料理のフェスでは、誰でも一度は口にしたことがある馴染みのある料理というのが必須条件だろう。つまりもともと専門店があり、普段から「一品売り」が成立しているメニューだ。普遍的なメニューでありながら、個性やオリジナリティーが出しやすい、というのも必須となる。

 ●オリジナリティーが必要な背景

 オリジナリティーは、一品フェスでは非常に重要な要素だ。フェスとして楽しくエンタメ要素をもたらせる個性が必要で、味つけだけでなく、調理法や見た目のインパクト、食感の違いなど、五感に訴えた違いをもたせることがフェスでは求められる。なぜならば客が一斉にやってきて、一度に他店と比較し、その場で評価する場所だからである。すぐ隣では競合店が必死に頑張っている姿がわかる。そして、人気度合いも比較できてしまう。客が満足しているのか、自分の店がどう評価されるのか、目の前に突き付けられる場なのである。埋もれないようにしなくてはならない。さらに物理的な違いだけではなく、店舗ごとの想いやこだわりを客は求めているので、そういった意味での個性やオリジナリティーを見せて、「人間」を感じさせることを求められるのがフェスの特徴でもあるといえる。

 ●完結型、さらにはしごができるメニュー

 また、一品フードフェスでは、一品でも満足できる「完結型」メニューでなければならない。ラーメンしかり、カレーライスしかり、餃子、ハンバーガーしかり。

 そのため、例えば「唐揚げフェス」などでは、ビール会社も出店するのが常だ。唐揚げだけでは糖質が欲しくなったり、口の中が脂っこくなったりしやすいので、ビールに補完してもらい「完結型」に仕上げる。ビールは糖質でもあり、口の中をリセットさせて、さらには店と店をはしごしやすくさせる潤滑油の役目もある。唐揚げなど一品の単価が1000円以下のメニューの場合は、数店舗をはしごして食べ比べしてもらうことでフェスとしての活気につながる。

 ●目的次第でフェスの在り方も変わる

 いっぽうで、一品メニューフェスながら、「はしご」を想定していないフェスもある。例えば、夏に東京日本橋で開催される「日本橋かき氷フェス」では、一品のかき氷の価格が1500円超えも珍しくないため、一店舗に留まる客が大半だ。加えてかき氷はシェアしにくいメニュー。店舗をはしごするのが目的ではなく、個性豊かなかき氷で涼を感じつつ、日本橋という土地に愛情を持ってもらうべく地域活性が目的のひとつとなっている。フェスのコンセンプトによって、メニューの楽しませ方も変わる。

 主催側の願いや目的と出店者の想い、客の気持ちが一体化され、競合ながら店舗同士は共鳴もあり、そうした独特の一体感がフードフェスの楽しさなのだと思う。

 (食の総合コンサルタント トータルフード代表取締役 メニュー開発・大学兼任講師 小倉朋子)

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