古典に学ぶ春の養生:立春のうちから、「春」にふさわしい生活を
◇早起きと庭の散歩がおすすめ
●立春にふさわしい生活とは?
まだまだ寒い日が続きますが、2月3日は立春です。2000年以上の歴史を持つ中国の伝統医学「中医学」の観点で言えば、立春のうちから春にふさわしい生活を送ることが、健康長寿に必要な養生ということになります。
では、どんな養生が必要なのでしょうか? 中医学の基礎理論となっている医学書「黄帝内経(こうていだいけい)」から、その一部を紹介します。
●「黄帝内経」が説く養生
「黄帝内経」は紀元前1世紀ごろに編さんされたとされる、現存する中国最古の医学書です。2011年にはユネスコの「世界の記憶」に選定されました。「そんなに古い本が現代社会に通用するの?」と思うかもしれませんが、実際に医療現場では、この本に書かれている治療法で、現代の西洋医学では対応できない病気を治した実績が数多くあるのです。
この書物は、病気の治療法だけでなく四季の養生法も説いています。春については、「春三月、此謂発陳、天地倶生、万物以栄、夜臥早起、広歩於庭、被髪緩形、以使志生、生而勿殺、予而勿奪、賞而勿罰、此春気之応養生之道也、逆之則傷肝、夏為寒変、奉長者少」と書かれています。この内容をかいつまんで紹介すると次のようになります。
「春三月」とは24節気の立春と雨水(1月)、啓蟄と春分(2月)、清明と穀雨(3月)のこと。昔はこの6節気を春としていて、現代の1~3月より1カ月分早いのです。「発陳」は冬に蓄積してきたものを春に解放するという意味。つまり、この時期の旬の食材を使って、上手に気を発散しないと、春に特有のうつや感染症などにかかりやすくなると説いています。
●概日リズムに合わせる
春の寝起きの基本は「夜臥早起」で、夜は少し遅めに寝て(23時を過ぎない程度)、朝は早起きすること。この時期は、朝日が昇る時間も冬に比べて早くなります。つまり概日リズムに合わせるように言っています。
運動面では「広歩於庭」(庭を闊歩する)。大切なのは遠出をせず、庭のような近場をゆっくりと散歩することです。なぜかと言うと、春は季節の変わり目なので、急にものごとを進めると心身ともについていけないからです。
装いは「被髪緩形」で、結った髪の毛を下ろして、ゆったりめの衣服を着ること。冬のようにきっちり服を着込まず、解放的な服装で気分もリラックスして春を迎えましょう。そうすることで「以使志生」、つまり気持ちが前向きになって、新しいことに取り組む意欲が生まれるのです。
こうした養生に逆らう生活を送ると、「逆之則傷肝、夏為寒変」。つまり、夏に体調不良や病気になるとされています。中医学は、その季節だけの対処法でなく、次の季節までも視野に入れた養生を教えてくれているのです。(国際中医師/国際中医薬膳師 藤村顕太朗)