料理人の教育法(11)杉の目・高橋勝己総料理長
「まずは段取りのよさを身につけてほしい」と言うのは、北海道の老舗郷土料理店「杉の目」の高橋総料理長。例えば若手の仕事である薬味の準備。予約状況を考え、曜日や季節でフリーの客数を想定し、適量を用意する。
「早い時間から店に来て仕事をするのも大切だが、ワサビは時間をおくと香りが抜けてしまう。他の薬味も同じこと。用意してから使うまでの時間を考え、一番いいタイミングで準備するのが理想的」
それは長じて将来にもつながる。
店の自慢は新鮮な素材を使った旬の料理。刺身や焼き物などは調理したてを提供するのが基本だ。
食事の進行状況を考慮しながら、どの料理をいつ出すかタイミングを図り、一度にさまざまな仕事をこなさなければならない。フリーの客が多い日は、食材も足りなくなる。
「この食材がきれた時は何を使うか。忙しくなった時にはどうするか。さまざまな状況を想像し、常にイメージトレーニングしておくことが大切。段取りが悪かったり、読みが甘かったりすると、必ず手が回らなくなる。見習いのころは仕方ないが、本来は忙しい時にこそ、頭と手を早く動かさなければいけない」
若い時から仕事の段取りを意識し、どんな状況にも対処できる臨機応変さを身につけてほしい、と高橋総料理長は語る。
◆「杉の目」=札幌市中央区南五条西五丁目、011・521・0888