宅配特集:盛り上がる宅配フードビジネス 高まる需要、相次ぐ新規参入
共働き世代の台頭、少子高齢化社会の到来、IT化による在宅需要の高揚などの世相を背景に、宅配ビジネスが活発化している。ピザ、弁当、すし、中華を軸とする既存市場に、昨今はファミリーレストラン、コンビニエンスストア、テークアウト店など複合展開による新規参入が相次ぎ、宅配ニーズは高まる一方だ。
一大ブームを巻き起こした宅配ピザ業態は、わずか一〇年間で三〇〇〇店舗を突破。他業態を圧倒する勢いで市場を形成した。
だが、ここ四~五年は頭打ちで一店舗あたりの売上げは下降線の一途。かつてはバイク一台あたり月商一〇〇万円を誇ったが、昨今は六〇~八〇万円に低迷。確固たる市場を築いたものの、横ばいの店舗数(店舗過密化)で限られたパイを奪い合う構図で、ディスカウントに拍車がかかっている。
もともと「高い」と評されてきた客単価は、ブーム時の二五〇〇~三〇〇〇円から一五〇〇~二〇〇〇円に低下。L・Mサイズに加えてSサイズが定番化し、グランドアイテムの価格引き下げが相次いでいる。
とりわけ、ドミノ・ピザのテークアウト一〇〇〇円引きセール、ピザーラ、ストロベリーコーンズの半額チケットキャンペーンは、業界の価格相場を大きく塗り替える先導役となった。
こうした状況下、ピザの単品ラインアイテムと高単価に依存した、従来の体質を改善する動きが活発化している。
まずは、パスタアイテム導入などの宅配イタリアンへの特化。そして、車両変更などのランニングコスト見直しだ。(記事別掲)
宅配ずし業態は、味よし、百花、都人などの中堅チェーンを除く、五~一〇店舗の中小チェーンが市場構成比の大半を占める。一般すし店の出前ニーズを吸収する形で、徐々に勢力(店舗数)を拡大している。
ただし、オーダーピークに対応するオペレーション改善(配達時間厳守・品質管理)など、かねての課題を克服できず、依然「好機を逃すジレンマ」を抱えたまま。一店舗あたりの売上げも月商三〇〇万~六〇〇万円と開きがあり、業態としては未成熟と見られる。
注目すべき動きは、ピザーラが手掛ける柿家鮓の宅配チェーン化。「ばらちらし」をメーンとする試みが、宅配ずし業態に波及効果をもたらすか見物。日本KFCが手掛ける菱膳では、同類の「てこねずし」がヒットしており、可能性は高い。(1面、3面記事参照)
宅配中華業態は、上海エクスプレスのチェーン化を皮切りに五年前から多店舗化が始動。チャイナクイック、チャイナチャイム(元チャイナエクスプレス)が参入し、現在、東京二三区内を中心に市場開拓のまっただ中にある。
上海エクスプレスは、本部がオーダーの受発注を一元管理する独自システムでFC展開。チャイナクイックは、一等地出店を基調にテークアウト注力の直営展開(13面記事参照)。チャイナチャイムは、宅配焼肉・牛拓との複合によるFC展開(24面記事参照)。それぞれに特徴があり、今後、どこが抜け出すか注目される。
宅配弁当業態は、長引く景気低迷で冷凍弁当をレンジアップする高価格宅配弁当の店舗数が急速に減少。
入れ替わりに、持ち帰り弁当の宅配導入が急増している。関西地区では、ほっかほっか亭、かまど家、ライスアベニューが本格的に宅配導入に乗りだし、弁当市場のサービス競合が激化している。
これらは、大幅な売上げアップを狙うよりも、売上げ維持のテコ入れ策としての色合いが濃い。デフレの潮流と重なり、来年以降、関東地区へ波及は必至と見られる。
だが、なかには既存仕出し弁当の顧客層を着実に吸収し、売上げを上げている事例もあり、新規開拓の見本として注目されそうだ。(8面記事参照)