ピッタリの相性そばとコショウ、専門2店が提供:無識庵「越後屋」
東京・王子で明治40年から続く「越後屋」三代目当主の坂場正則さんは、「コショウとそばの相性がこんなにいいとは予想もしませんでした。一度メニュー化して以来、どんどん創作力をかき立てさせてくれます」とコショウの魅力を語る。
アイデアメニュー作りを楽しむ坂場店主。コショウとの出合いから生まれたヒットメニューは、「王子のたぬき」(九五〇円)。
作り方は、コンニャクをから煎りして水分を飛ばし、油で素揚げにする。タネ汁に酒、ゴボウ、コンニャク、キノコ、長ネギを入れて甘辛く煮る。ここで黒コショウの粗びきを入れて風味づけし、器に盛ったそばにのせ甘めのつゆをかける。仕上げに大根おろしと三ツ葉、赤芽、ユズを添える。
昭和47年ころからそばが従来の手打ちから機械打ちに変わりつつある中、「そば屋がみんな同じものを作ってどうする。いずれは量の時代から質の時代に変わるだろう。他店との差別化を図るためにも、思い切って打ち方一つで味が変わる手打ちに戻そう」と、全量を手打ちに切り替えた。
またうわさの人気サラダ専門店に出向いたおり、女性客で長蛇の列をなしているのに感動。新規客に女性客を取り込まない手はない、そのためには「ヘルシー感あるサラダをそばにもドッキングさせてみては」となった。
麺の太さなど試行錯誤の結果、細打ちうどんで「サラダめん」をオンメニュー。「当初は思惑通りにはいかなかった」が、区役所に近い立地から評判は次第に広まり、OLたちの人気メニューとなった。
この「サラダめん」(九〇〇円)、レタス、キャベツ、玉ネギ、ピーマン、キュウリなど八種の野菜をたっぷり使い、塩、コショウで下味をつけ、自家製ドレッシングをかけたもの。現在は定番メニューに昇格している。
そば屋のテーブルには唐辛子がつきものだが、ここはコショウも置く。
卓上缶には「和風のおでんや納豆に洋がらしが合うように、鴨南ばんに胡椒がよ~く合います」の言葉を添え、「そばにもコショウが合う新しい食べ方」をアピールする。
◆無識庵「越後屋」(東京都北区王子本町一‐二一‐四、電話03・3900・5904)営業時間=午前11時30分~午後3時、5時~9時(日・祭日通し)、水曜日定休