話題の飲食材インタビュー:「ギネススタウト」サッポロビール・大久保英俊氏
嗜好の多様化とデフレが相まり、価格の二極分化に拍車がかかる中、発泡酒に対向するプレミアムビールの人気が徐々に高まっている。その代名詞ともいえるのがアイルランドを代表する黒ビール「ギネススタウト」だ。ビールと一線を画するというギネスのこだわりと人気の背景について、サッポロビールの大久保英俊マネージャーに聞いた。
(サッポロビール(株)営業本部営業部輸入酒類グループマネージャー 大久保英俊氏)
‐‐ギネスの変遷と現状についてお聞かせください。
大久保 当社がギネスの輸入販売を手がけたのは昭和39年です。当時スタウトを日本で作りたいと考えていた松山茂助社長が、アイルランドでギネスに出合い感動したのがきっかけでした。以来約四〇年間にわたって多くの人たちに飲まれてきました。
現在、ギネスのスタウトには、アルコール度数四・二%の「ドラフト(樽詰め)ギネス」と「缶ドラフトギネス」、六%の「ギネスエクストラスタウト」の三アイテムがラインアップされています。
平成12年から「ドラフト(樽詰め)ギネス」の業務用販売を本格的に開始。さらに一般向けとして「缶ドラフトギネス」の発売も強化し、市販市場に広めることにも成功しています。
昨年のワールドカップサッカーや、ここ数年のアイルランド、イギリスへの観光客の増加といった追い風もあり、ギネスの人気はますます高まっています。「ドラフト(樽詰)ギネス」を提供する店は、アイリッシュパブをはじめ首都圏を中心に五〇〇軒を超え、今年末には六〇〇軒強を見込む急成長ぶりです。
‐‐ギネスのセールスポイントは何ですか。
大久保 ギネス社の創業以来二四〇年以上ほとんど変わらない醸造方法による伝統的な味と、「ギネスはギネスであってビールではない」というギネス流のこだわりにあります。
ギネスは、上面発酵特有のコクと香ばしさ、マイルドな味わいの細かくクリーミーな泡が特徴です。その味には根強いファンが多く、飲む動機にも「ギネスを飲みたいから」という目的意識の高い動機が一番にあがっています。
ギネスのこだわりで欠かせないのが、「パーフェクトパイント」というサーブ方法です。これはギネス本来の味と姿を完璧な形でお客さまにサーブすることを目的としたもので、使用するグラス、サーブするギネスの温度、グラスへの注ぎ方とその時間、サーバーのメンテナンス方法といった細かいチェックポイントが規定されています。
製造からお客さまの手元に届くまでのすべての過程に語るべきものがある「ギネスの世界」、これが一番のセールスポイントだと言えるでしょう。
‐‐外食市場に対する今後のアプローチ策は?
大久保 ギネス流のこだわりをよく理解したうえで、その良さを末端のお客様に伝えていただける飲食店の方々を探しています。
‐‐現在の国内のアイリッシュパブの状況はどうですか。
大久保 純粋なアイリッシュパブは現在全国で六〇店舗ほど。どの店舗も二〇代後半から三〇代にかけての男女、それに外人客が多いのが特徴です。立ち飲みに入る感覚で気軽に入って気軽に出られることと、パブのもつ新鮮さとおしゃれなイメージが受けています。
‐‐今後の課題はなんですか。
大久保 ギネスの味わいはどんな料理にも合います。洋食店に限らず和食レストランから居酒屋まで幅広いお店で展開できます。今後はそうしたお店にアプローチするためのメニュー提案と試飲会などを企画する意向です。
‐‐ありがとうございました。
◆アイルランド240年の伝統「ギネススタウト」
アイルランドを代表する黒ビール「ギネススタウト」は一七五九年、首都ダブリンのセント・ジェイムス・ゲイト醸造所でつくられて以来、世界中の多くのビールファンから愛飲され続けている。
原料は厳選された自然原料(麦芽、ホップ、酵母、水)のみ。独特のダークスタウトカラーの色合いは、麦芽の一部を焙煎したものを使うことで、また、独特の香りと苦みは伝統のホップから生み出される。
ギネスのこだわり「パーフェクトパイント」のためのチェックリストは(1)提供時適正温度五~八度C(2)サージング(注ぎ)時間九〇~一二〇秒(3)適正ヘッド(泡高さ)一四~二一ミリメートル(4)六ステップによる抽出(5)ブランドマーク入りグラスを使用(6)カニ泡を発生させない(7)あふれさせない。