ピカイチキッチン(86)調理科学 スチームの基本(Steam)

2008.10.06 348号 19面

 ●調理法

 加熱蒸気を直接食品の表面に吹き付けて調理する方法であり、古来から使われてきた、“蒸籠”が基本である。他の調理方法に比べて調理時間が短いなどの特徴がある。

 調理温度は機器内部の圧力や高度(気象学的高度)によって若干異なる。また、同じ“蒸す”でも、蒸気に一定の圧力をかけて調理する「加圧式」と、圧力をかけない「無圧式」がある。加圧式の場合は、スチームの圧力は約1.05kg/平方cmとなるため、蒸気の温度が約120度Cになる。従って、調理時間は無圧式に比べてやや早く仕上がるが、食品内の組織や細胞が壊れやすく、料理の品質としては無圧式の方がよいと考えられる。このため最近では加圧式の機器はほとんど見られなくなっている。

 また、スチーム調理は噴き出す蒸気に水滴が含まれているため、一定時間食品の表面に触れた場合、例えば麺、まんじゅう、シュウマイ、ギョウザなど製品によっては、製品の表面がのり状となり蒸しむらの原因となる。従って、スチーム調理のポイントは、良質な100度C前後の水滴を含まない蒸気が得られる厨房機器を選定することである。

 さらに、機器の内部で温度変化を生じさせる原因として「空気」があり、機器内部が解放式である以上、不要な空気が侵入して蒸気と混じり合うことで温度むらを生じることが考えられるため、こうした要因を排除できる機器の選定もきわめて重要である。この点、近年のスチームコンベクションオーブンは機能が優れており、上手に使いこなしてほしい。

 ところで蒸気は沸騰水に比べて、その「力」は約5.4倍ある。例えば、100度Cの沸騰水は100kcalであるが、蒸気は約540kcalとなる。沸騰水に瞬間的に手を入れても、やけどしにくいが、沸騰したやかんから噴き出す蒸気に手をかざすと、やけどをする確率が極めて高いのと同じ理屈である。

 ●料理の特徴

 蒸気式調理法は、素材の風味、色、栄養素を多く残して調理できることから、最近のヘルシー志向向に最適であり、急速に拡大している。特に他の調理法と比べてビタミン類の損出が少なく、ベーク調理やパスタ調理以外はほとんどスチームでできる。ただし、冷凍のホウレンソウや豆類のように密度の高い食材は、内部が十分加熱できないうちに表面が蒸し過ぎとなる場合もある。

 ((有)本山フードビジネス研究所 代表 本山忠広)

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