メニュートレンド:いか焼きを“あて”に本格カクテルを堪能 「いか焼きバー 空’s空」
大阪にはキタ(梅田周辺)やミナミ(難波周辺)に加え、ヒガシと呼ばれる繁華街がある。JRと京阪電鉄の「京橋駅」周辺で、気さくで個性的な店が多い庶民派の街として親しまれている。そのヒガシでもひときわ異彩を放っているのが、「いか焼き」を“あて”にグラスを傾けるバー「空’s空(クーズクー)」だ。おしゃれなカクテルと「いか焼き」のユニークな組み合わせはもちろん、大胆不敵ともいえる空間デザインも話題を呼んでいる。
大阪でいう「いか焼き」は、イカの切り身が入った小麦粉の生地を鉄板に挟んで焼き上げ、ソースを塗って2つ折りにした粉もん料理。いわゆる「イカの姿焼き」とは異なる。
この大阪名物を全国の百貨店の物産展などで実演販売している(株)やまGENが、地元京橋にオープンしたのが、「いか焼きバー 空’s空」である。
やまGENの「いか焼き」の特徴は、オリジナルの粉とソースによる“モチモチ感”と“コッテリ感”。ゲソをたっぷり使うことで“プリプリ感”を効かせている点もポイントだ。さらに、鉄板に挟んでしっかりプレスする一般的な焼き方の「かた焼き」に加え、やや弱めにプレスする独自の焼き方を確立。だしで味付けされたモチモチと軟らかい厚めの生地が、ここでしか味わえない「いか焼き」として人気を集めている。
マネージャーの大西賀之さんによると、「ウチのいか焼きは、さっぱり系のカクテルと相性抜群」とのこと。「特にビール感覚でゴクゴク飲める、スペインの軽めで辛口のシェリー酒をソーダで割ったものがお薦め」だそうだ。
この店には、もう1つユニークな特徴がある。それは「空に浮かぶ雲の上でお酒を飲む」というコンセプトに基づいた空間デザインで、なんとお客は、カウンターの下をはって行かなければ席にもトイレにもたどり着けない構造になっている。この大胆なアイデアを採用したオーナーからマネジメントを任されている大西さんは、「いか焼きにしろ、空間デザインにしろ、確かに普通のバーにはないやりにくさや難しさがある」と語る。
しかし、「マスコミに取り上げられる機会も多く、初めてのお客さまを増やす上で功を奏しているのも事実。最初は好奇心で訪れたお客さまを固定客にしていくことが、自分の役割」と認識している。そのために心がけているのは、床の掃除やトイレの後のお絞りをはじめ、当たり前のサービスを決しておろそかにしないこと。奇抜さだけに走るのではなく、「くつろいだ気分で時間と空間を楽しむ場」というバーの基本を忠実に貫いている点が、オープンから1年半弱、京橋エリアでは高めの価格設定にもかかわらず、着実に固定客を増やし続けている理由のようだ。
◆「いか焼きバー 空’s空」/経営=(株)やまGEN/店舗所在地=大阪市都島区東野田町5-2-8 2F、電話06・6358・7453/開業=2007年1月/営業時間=午後6時~翌午前3時(いか焼きは翌午前0時半まで)、火定休/席数=12席/1日来店客数=平日15~20人、金約30人/客単価=2000~3000円/スタッフ=1人/目標月商=約120万円
●愛用食材:イセ食品(株)(東京都台東区) 「森のたまご」
「いか焼き」はシンプルな料理だけに、食材1つ1つの味わいが仕上がりに与える影響が大きい。そこで(株)やまGENでは、粉やソースに加え、卵にもこだわっている。「森のたまご」は独自の飼料配合で、日本人の嗜好を配慮した風味や艶を大切に、卵本来のおいしさを追求。通常の卵よりもビタミンEやDHAが豊富で、コクとうまみに優れている。また、ひよこの時点からの一貫したシステムで、安全と新鮮を厳しく管理している点も、この卵を愛用している理由の1つだ。