近代メニュー革新!繁盛レシピ研究所:橋本食堂「鍋焼きラーメン」
「鍋焼きラーメン」は、戦後まもなく高知県須崎市で誕生したご当地ラーメン。鶏がら醤油スープとストレート細麺の素朴な味わい、土鍋(もしくはホーロー鍋)で熱々を提供するユニークなスタイルが特徴だ。地域活性化を掲げて現在、市内約40店舗の飲食店が鍋焼きラーメンをメニュー化。中でも「橋本食堂」は、唯一の鍋焼きラーメン専門店として人気を集めている。
岡崎恵美店長代理は「毎日食べても飽きないやさしい味が鍋焼きラーメンの醍醐味」とし、「創業から約30年間、食材も調理法も変わりない」という。
約5年前、高速道路が須崎市に延びてから客足は増えるばかり。鍋焼きラーメンの象徴とされる橋本食堂の味づくりと背景に踏み込んだ。
◆営業の概況:昼営業だけで集客200~250人 スタッフは全員女性
橋本食堂の立地は、JR須崎駅から徒歩10分ほどの、商店街や観光とは無縁の閑静な住宅地だが、平日は約100人、土曜日は最高200人を集客。客層は平日は地元客が大半、土曜日は地元客・観光客半々。家族客が比較的多い。スープと生麺をセットにしたテークアウト販売も盛況だ。
メニューは「鍋焼きラーメン」(普・大・特大)、「ご飯」(大・中・小)、「ビール」だけ。スタッフは全員女性で、先代の娘の岡崎店主ほか3~4人の主婦で切り盛りしている。
ランチタイムだけの単品商売でこの様子なら、繁盛ぶりは推して知るべしだろう。
◆特徴と調理:親鳥をあますことなく活用 ラーメンプロジェクトXの7定義
鍋焼きラーメンの魅力は、毎日食べても飽きないシンプルな味わいだ。
スープは鶏がらを約4時間炊いたもの。これを土鍋に注ぎ、鶏肉(約50g)を加え、ガスレンジで沸騰させ、地元須崎のマルキョウ醤油などで調味。ゆでたストレート細麺(100g)、竹輪、ネギ、生卵を加えて煮込み、スープが沸騰したまま蓋をして提供する。
鶏がらと鶏肉はすべて親鳥を使用。親鳥から出る黄ばんだ鳥脂がスープの表面を覆うことで熱々状態が長持ちする。親鳥特有のコリコリとした鶏肉の食感もポイントだ。
須崎商工会議所が「鍋焼きラーメンプロジェクトX」で定めた定義は次の通り。
(1)スープは親鳥の鶏がらの醤油ベース。
(2)麺はストレート細麺で少し硬めに提供。
(3)具は親鳥肉、ネギ、竹輪、生卵など。
(4)器は土鍋またはホーロー鍋、鉄鍋。
(5)スープが沸騰した状態で提供。
(6)たくあん(古漬けがベスト)を添付。
(7)おもてなしの心を込める。
◆発祥と展開:元祖は戦後の谷口食堂 出前の心遣いから土鍋へ発展
鍋焼きラーメンの元祖は、戦後まもなく須崎市街の路地裏に開業した「谷口食堂」。店の斜め前に「かし○(わ)の吉村」という鶏屋があり、そこから廃鶏や鶏がらを分けてもらい作り始めたのが発祥だ。鶏がらだけの炊き出し、チャーシューではなく親鳥肉を使う伝統は、ここに起因する。
当初は普通の器で提供していたが、出前を始めるのを機会に、谷口兵馬店主の「冷めないように」という心遣いからホーロー鍋に転換した。その後、近隣の「みつだ食堂」が冷めにくい土鍋を採用して土鍋ラーメンが誕生。これに「水野食堂」が続き、この3軒が「老舗御三家」として活躍した(現在すべて閉店)。
1980年、谷口食堂が閉店。だが地元には熱狂的なファンが多く、「あの味を復活させよう」と、鍋焼きラーメンを提供する店が増加。2002年、高速道路の延伸をきっかけに須崎商工会議所が「鍋焼きラーメンプロジェクトX」を発足。現在約40軒の飲食店とともに普及活動に取り組んでいる。
●橋本食堂
店舗所在地=高知県須崎市横町4-19/客単価=650円/営業時間=午前11時~午後2時50分、日祝定休
◆エバラで再現!模擬レシピ
○作り方
「鶏がら仕立て醤油味」をスープとし、仕上げに好みの量「鶏油」を加える。
○使用食材:「鶏がら仕立て醤油味」
すっきりした後味の澄んだ醤油ラーメンスープ。じっくりと炊き出した鶏がらスープをベースに使用。香り豊かなねぎ油と鶏油を程よくきかせている。使用方法は、本品40ml(45g)を360mlのお湯またはがらスープで希釈。
規格=2kg(約44人前)
○使用食材:鶏油(とり油)
鶏油に香味野菜を加えてじっくりと炊き込んだ鶏油。あらゆる中華料理の隠し味、仕上げ油、炒め油として活用できる。
規格=800g