アポなし!新業態チェック(47)GREEN GRILL渋谷店

2010.12.06 381号 04面

 モスフードサービスの子会社、モスダイニングは去る4月、渋谷の商業施設「ココチ」内に「野菜の力と大地の恵み」をコンセプトにしたレストラン「GREEN GRILL(グリーングリル)」を開業した。これまで「来店顧客の9割が女性客」となるほど女性に人気が高いベジタブルレストラン「chef’s V(シェフズブイ)」を丸の内、横浜、渋谷に展開してきたが、渋谷店をリニューアルし、男性客にもアピールできるメニューやディナー時間帯を強化するため、アルコール類を充実させた新業態としてスタートさせた。

 従来と同様に全国の産地から仕入れたこだわりの野菜に加えて、ボリューム感ある肉料理や自家製のハムやソーセージ、有機栽培で育てられたブドウを原料にしたフランス産のBIOワイン、自家製サングリアなどを中心に新しいメニューを取り揃え、より幅広い年代の男女を対象にした業態へと進化させている。

 特にディナーメニューには「ラタトゥイユ」や「フリット」など常時10種類ほどを一律450円で提供する「野菜のデリ」や、小さなココット鍋に入れた熱々の「野菜のココット」(600円~)など、つまみとしても利用できるアイテムを充実させて飲酒需要の拡大を狙う。また、自家製アイスクリームなど、スイーツも手の込んだ品が並んでいる。

 店内はナチュラルな木製家具を中心に、大型のテーブルや素朴なチェック柄のクロスをかけた小テーブルなど、落ち着いたデザイン。子ども連れで渋谷の騒がしさを避けたい年代層にも対応している。同社では、店の販売状況や顧客の動向を踏まえ、他店舗への展開を検討する予定という。

 ★けんじの評価

 店はビルの3階だが、エントランスから3階までは吹き抜けの直通エスカレーターが伸びている。フロアに降りると、白く塗られた壁面に大きなブロッコリーのイラストが描かれ、ガラススクリーンの中では多くの女性客が楽しげに食事をしている。子ども連れの主婦グループなど、比較的ファミリー層も多く、ここは渋谷かと一瞬戸惑うような落ち着いた雰囲気。3階フロアにはもう1店、リゾートの雰囲気を盛り込んだカフェがあり、そちらはもう少し若い世代が中心のようだ。上層階にある映画館の帰りがけに、遅いランチを楽しむ人たちもいるのかも知れないが、人気の「チョイスランチ」は1500円。男性ビジネスマンのランチにはちょっと無理かも。

 「シェフズブイ」だった店のリニューアルによる新業態だ。シェフズブイは運営会社が数年前に破産申請し、モスフードサービスに事業譲渡されて100%子会社となったが、今年の3月にモスダイニングと社名変更された。また、入居する商業ビル「渋谷ココチ」も、もともとはユニマットグループが開発したビルだが、現在は東急系の投資法人が運営しているようだ。

 そうした資本系列の移転についての詳細は分からないが、ここ5年あまりのあいだに、日本の経済状況が大きく変化したという時代背景の縮図のようにも感じられる。だが、そんな感想とは無縁に、ビル周辺にはオシャレな若い人たちが大勢行き来しているし、店は女性客であふれている。

 食の世界では、やはり世知辛い世の中とは無縁な、幸せな気分を提供してくれるところに人気が集まるのかも知れない。

 (外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)

 ◆店舗概要

 開業=2010年4月9日/所在地=東京都渋谷区渋谷1-23-16、ココチ3F/席数=110席

 ◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウォッチャー。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら