外食史に残したいロングセラー探訪(49)ビヤホールライオン銀座七丁目店「チキンバスケット」など
◆創建77周年の歴史あるビアホール
1899年(明治32年)に日本初のビアホール「恵比壽ビヤホール」が開店した35年後の1934年(昭和9年)、大日本麦酒(株)(現・サッポロビール(株))の本社社屋ビル1階に「ビヤホールライオン銀座七丁目店」はオープンした。第二次世界大戦時の空襲も免れた現存する日本最古のビアホールで、海外からの観光客も多く訪れ、さまざまなロングセラー商品があるという。
(株)サッポロライオン・広報担当の西村礼佳氏によると、1934年開業のライオン銀座七丁目店だが、現在残っている63年7月のメニュー表には、今でも人気のメニューである「若鶏の唐揚げ」(200円)、現在の「チキンバスケット」(880円)などを確認することができる。
平成の時代に入り、ビアホールの業態は人気に陰りを見せていたが、サッポロライオンでは2003年に代表取締役社長に就任した山崎範夫氏は「ビヤホールの復活」を掲げ、ビールを楽しむためのフードメニューにも大幅なてこ入れが行われた。
まず、そのころの流行であった創作料理を中心とした商品構成を見直し、「メニューブックを見なくても注文できる」メニューの見直しを図った。「チキンバスケット」などの定番メニューは、約20年前のレシピを当時の銀座七丁目店で調理を担当していたOBに依頼して探してもらうなど、「味の再現」にも力を入れた。
同時に、店舗ごとにばらつきのあったレシピを、「ライオン」の味としてイメージを固めるために統一を行った。例えば、パルメザンチーズを加えてコクと深みのある味に仕上げた唐揚げの衣や調味料をPB商品で各店舗に供給し、味の統一を徹底している。昨年10月より全店舗での統一が可能となり、その効果も徐々に表れているようだ。
また、歴史のある同店には、ほかにもさまざまなロングセラーが存在している。約10年前からの人気商品「ポテトとソーセージのガーリック炒め」(880円)は、当時珍しかったアンデスポテトを使ったメニューを作りたいという調理長の発想から生まれたメニュー。ピンポン玉サイズで、皮が薄くて軟らかいため皮付きのまま食べられるという特徴を生かして、皮をむかずに2度素揚げし、ソーセージ、玉ネギ、ベーコンと、オリーブオイルで炒め、ガーリックバターで風味付けしている。現在はアンデスポテトではなく、北海道産のジャガ芋を使用している。ビールに合う濃いめの味付けが好評であり、常に人気メニューの3位以内にランクインしている。
今後の展開について、「早い時間帯には高齢のお客さまも多く、お1人さまでも楽しめるようなポーションの設定なども検討している。また、国産食材を中心に、輸入の場合も飼料・肥料からこだわり、安心、安全を追求していきたい」と西村氏。ビヤホールという食文化の一つを、微調整を行いながらこれからも発信し続けていくことだろう。
●ビールに合う味をブラッシュアップ
フードメニューのブラッシュアップは、ほかの人気ロングセラー商品でも行われた。
「枝豆」(600円):ビールに欠かせない枝豆は、使用する枝豆の品種から見直しを図った。夏は群馬県産・秋田県産の「湯あがり娘」。ほかの季節では北海道・中札内村のとれたてを瞬間冷凍した『そのまま枝豆』を使っている。常連客からは、「枝豆がおいしくなった」と好評。
「ミックスピザ」(1,100円):綿実油だけを使うことでカラッと揚げることができる。
「ローストビーフ」(980円):1日2回焼き上げる。1回分24枚と販売数を限定。館内放送で焼き上がりをアナウンスしたり、ワゴンサービスを行うなどの演出も効果的。
●店舗データ
「ビヤホールライオン銀座七丁目店」/経営=(株)サッポロライオン/所在地=東京都中央区銀座7-9-20 銀座ライオンビル1階/開業=1934年