焼肉特集:“日式”が熱い上海焼肉市場 無煙ロースターのシンポ、満を持して上海進出

2012.01.02 394号 04面
中国の高級外食市場で注目されているターンテーブル式無煙ロースター(写真=叙々苑 横浜港北店)

中国の高級外食市場で注目されているターンテーブル式無煙ロースター(写真=叙々苑 横浜港北店)

部品数の少ない中国モデル(3D フィルター仕様)

部品数の少ない中国モデル(3D フィルター仕様)

 上海焼肉市場は、今、“日式”が熱い。中国で焼肉といえば、これまでは韓式焼肉だったが、中国経済の成長に伴い、焼肉文化の発祥である韓式焼肉から、洗練された日式焼肉へと人気が移行している。

 2011年7月、無煙ロースターのパイオニア企業として日本の焼肉文化の創造に寄与してきたシンポは、満を持して「神府貿易(上海)有限公司」を創設。9月には上海事務所を開設した。日本で無煙ロースターのナンバー1シェアを誇るシンポの中国本土進出により、日式焼肉店のレベル向上と日式焼肉人気のさらなる高まりが期待されている。

 ◆ハイエンドマーケットはまだ空白地

 上海の大卒初任給の平均月収は約4万2000円と、日本の5分の1ほど。一般的に平均客単価が4000~5000円ほどの日式焼肉は、庶民にとって高嶺の花と思われるが、「中国は日本のように平均という物差しでは測り知れない」と神府貿易・山田清久董事長は、中国マーケットの底知れぬパワーを語る。上海は、日本の群馬県ほどの面積に9倍の人口約1800万人、半径200kmまで商圏を広げると日本の半分強の人口の巨大マーケットであることと成長国ならではの旺盛な消費意欲に支えられ日式焼肉の人気は高い。

 韓式焼肉がたれに漬け込んだ肉を焼くのに対し、日式焼肉は、部位ごとに適したもみだれで提供前にもむというように、素材を生かした味わいが上海でもうけている。

 しかし、おいしさは理解されても、まだ食文化として日式焼肉が根付いているわけではなく、「調理、サービスともにまだまだ進化する余地は大きい。市場的にはハイエンドマーケットが空白地で、いわば宝の山。その空白の市場を創造していくお手伝いをしたい」と山田董事長は意欲を燃やす。

 また、日式焼肉が注目される理由として、人件費の高騰という背景もある。中華料理は、メニュー数が多く、料理人など従業員を多く抱えないと店舗のオペレーションが回らない。だが、人件費は毎年12~13%程度ずつ上昇しており、それが経営の圧迫要因となっている。

 しかし、日式焼肉は肉の切り方、もみだれ、盛り付けなど繊細な技術は求められるが、日本の合理的な店舗オペレーションの考え方を持ち込むことで大幅に人件費が削減でき、日式焼肉であること自体が大きな「差別化」ポイントとなり、なおかつ客単価も上げられると中国国内の過当競争、オペレーションコスト急騰に悩む中華料理店にとって一石三鳥の新業態として経営者からの注目度は高い。

 ◆蓄積したノウハウを活用しシンポブランドを販売

 シンポでは25年以上前から無煙ロースターを輸出し、日式焼肉を「世界のスペシャルディナー」へと広げてきた。日本では無煙ロースターの圧倒的なシェアを誇るシンポも、中国では後発メーカーであり、価格的にも現地商品と比較すると2、3倍の高値だ。

 山田董事長は、「シンポの無煙ロースターはメード・イン・ジャパン商品のため、現地メーカーと比較すると割高だ。しかし、価格競争をする気はない。日本で1万6000店、海外で500店以上の納入実績があり、お客さまと一緒になって繁盛店を作り上げてきたノウハウがある。40年間蓄積したノウハウを『シンポブランド』として、中国市場では焼肉店運営のマネジメントからレシピ作成、物件情報、中国進出を計画する日本の外食産業向けにはパートナーとの仲立ちといったことまでお手伝いしたい。無煙ロースターを販売するのではなく『シンポ(神宝)ブランド』を販売する。創業者の故山田武司社長の経営基本理念『感謝される販売、感謝されるサービス』は中国でも変わることはない」と熱く語った。

 ●「上海FHC2011」で脚光 中国市場に合わせ無煙ロースターの規格改良

 2011年11月16~18日、上海で開催された食品・原料の展示会「上海FHC2011」にシンポは出展。中国市場向けに規格改良した無煙ロースターを紹介した。

 その無煙ロースターの特徴は、中国では肉のカットが比較的大ぶりのため、日本は直径28cmの網が使用されるが、中国では韓式の直径30cmの鉄板の両方が使用できるようにしている。

 安全装置の作動用電力も中国の電力事情を考慮し、日本ではガス漏れなどに備えて安全装置に100Vの電力を使用するのに対し、わずか乾電池2本3Vの電力で安全装置が作動するようにしている。また、中国では焦げることが嫌われるため、日本よりも火力を若干弱くするなどきめ細やかな対応をしている。

 そして日本より一足早く、新技術も登載。吸引した煙の油分はダクトを汚し、長期間たつと吸引力が弱まり、無煙ロースターの役を果たさなくなってしまう。日本では使い捨て除去フィルターの使用がメーンだが、展示会に合わせて3層の立体構造の3Dフィルターを開発。3Dフィルターは煙の油分を85%除去するため、清掃の手間を大幅に削減し、ステンレス製で半永久的に使用できるためランニングコストも大幅に低減できる。日本でも今後、3Dフィルターを広げていく考えだ。

 ●“日式”発祥の焼肉店 「小南国日式焼〓(しょうなんごくにっしきやきにく)」

 所在地=古北店・上海市長寧区古北路666号嘉麒大厦1階

 「小南国日式焼〓」は、安恒(上海)餐飲管理有限公司が運営する焼肉店で上海9店、北京1店を展開している。小南国日式焼〓は98年に1号店がオープン。その時初めて「日式焼肉」という言葉が用いられた、いわば「日式」という言葉の発祥店でもある繁盛店だ。客層は70%が中国人、20%が日本人だ。

 大脇専務は、シンポの無煙ロースター採用の理由を、「日本のトップメーカーで、海外事業部の実績もあったので迷わず決めた。何年かに一度はどうしても直接相談したい問題が起きる。その時には『チケット手配の時間だけください』と言ってすぐに来てくれる。上海事務所が開設されたことでさらにきめ細かな対応が期待できる」とシンポへの信頼は厚い。

 ●白亜の洋館の高級店「仙炙軒(AMBROSIA アンブロッシア)」

 所在地=上海市徐匯区汾阻路150号

 2003年にオープンした仙炙軒は、白亜の洋館という言葉がぴったりの100年以上もの歴史を誇る建築物の高級店だ。日式焼肉だけでなく、鉄板焼き、天ぷらも提供している。客層は中国人、外国人が半々だ。また、土・日には結婚式場としても人気で、1年間は予約で埋まっているという。もちろん結婚式の料理も日式焼肉だ。

 王潔心(サニー・ウォン)店長は、「仙炙軒は、ドレスアップされ、ブランドを身に付けたお客さまが多い。服に匂いが付いたらお客さまにご迷惑をかけてしまう。だから性能のよい無煙ロースターでなければならない」とシンポ製採用の理由を語る。オープン以来使い続けているが、「部品数が少なくて洗浄しやすい。装置のトラブルもなく、卓上にちょっと傷がついたくらい」と王店長は満足そうに笑顔を浮かべた。

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