外食史に残したいロングセラー探訪(69)Soup Stock Tokyo「東京ボルシチ」

2012.11.05 404号 05面
洋食仕立てのあめ色スープ、レモンやヨーグルトの酸味が味を引き立てる

洋食仕立てのあめ色スープ、レモンやヨーグルトの酸味が味を引き立てる

女性が1人でも入れることがコンセプト(広尾店)

女性が1人でも入れることがコンセプト(広尾店)

 「女性が1人でも入れ、しっかりとした食事ができること」をコンセプトに、1999年に株式会社スマイルズが運営する食べるスープ専門店「スープストックトーキョー」は誕生した。今では一つのブランドとして認知されている。その店でオープニングから不動の人気を博しているのが今回紹介する東京ボルシチだ。

 ●苦甘さを引き出すソテーオニオン 東京発信のボルシチ

 ロシアの郷土料理ボルシチは、牛肉、ジャガ芋、ビーツなどを煮込んだもの。しかし、同店が提案するボルシチはビーツを使用しない。その代わり大量の玉ネギをペースト状になるまでひたすら炒めて作るソテーオニオンがベースとなっている。

 同社のフードプランナーの桑折敦子さんは「東京というフィルターを通して新しいボルシチを作りたかったと聞いています。玉ネギを炒めていくのは大変ですが、そこまでしないと、特徴であるあの苦甘さを出すことができません」と説明をする。

 食材はソテーオニオンの他に、牛肉、ニンジン、セロリ、ニンニク、レモン、香辛料、チキン・ビーフブイヨン、ヨーグルト、トマトペーストなど……。同スープに限らず、食材一つ一つにこだわりをもって、出来合いのエキスや余分な調味料を加えず、手間暇をかけている。また、食材の持っているうま味を第一に考え、季節に応じて最適の産地を選ぶこと。産地で調理できるものは産地で、大量調理の工場でも手鍋で作るのと同じように職人の手によって仕上げる。店舗でできることは店舗でするなど、新鮮さとうま味にこだわることもさることながら、ファストフード店で本格的なスープを提供するための工夫も見られる。「匠の技と仕組みの組み合わせが大切で、一番よい状態でお客さまに提供することを常に考えています」と桑折さんは話す。

 現在、同店では70~80種類のスープをローテーションで展開しながら新しいスープが開発されている。また、冷凍食品の販売、レシピ本の発行と、さまざまな展開をも見せている。今後の展開について同社・広報部の玉置純子マネジャーは「ファストフード店の方は常に新しい提案が使命だと思っております。7月には家族で来れる食卓としてレストランをオープンしました。たくさんの方にスープを好きになってもらい、食を通して豊かな生活を提案できたらと思っています」と話す。

 ●企業データ

 (株)スマイルズ/本社所在地=東京都目黒区中目黒1-10-23 シティホームズ中目黒203/事業内容=スープ専門店スープストックトーキョー(ファストフード店53店舗、冷凍スープ専門店5店舗、ファミリーレストラン1店舗)の運営、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」、ネクタイブランド「giraffe」などを展開

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