外食史に残したいロングセラー探訪(94)たわらや「名物たわらやうどん」

2015.03.02 432号 10面
少なく見えるが、他のうどんメニューと同じ小麦粉の量を使用

少なく見えるが、他のうどんメニューと同じ小麦粉の量を使用

 ◆ずっしり、もっちり超極太麺 シンプルすぎるシンプルさ 戦後40年を経て復活

 京都、北野天満宮すぐ近くに、通称「一本うどん」という、なんともインパクトのあるうどんを出す店がある。築400年の町屋で店を構える「たわらや」だ。古くから、北野天満宮詣での客でにぎわううどん屋だったが、戦後の物資が不足していた時代に、やむなく閉じた。1996年、15代目に当たる久保功さんは、奥さんの克子さん、次男の尚史さんと力を合わせて、うどん屋とともに名物うどんを復活させた。

 ●商品の発祥:よみがえった名物

 一本うどん復活のきっかけは、功さんの定年退職だった。「うどん屋の息子として、うどん屋を復活させる」と、一念発起。夫婦で調理師学校へ通った。調理師の免許を持つ次男の尚史さんは、会社を辞めて店を手伝うことに。古い記憶や資料をたどり、一本うどんや他のメニューを作り上げていった。

 「もともとの創業は、享保の時代と聞いています」と女将の克子さん。一本うどんは、いつ誕生したのか不明だが、いつの時代からか名物となっていた。15代目の功さんが大学生のころは、縁日が行われる毎月25日だけは店を開けていたという。

 ●商品の特徴:だしの中でとぐろを巻く

 かつてのうどんは、親指くらいの太さが一本だったらしいが、現在は、少し細めで2本。といっても、約1cm角の極太麺で、長さは50cmほど。同店で手打ちした麺を、じっくり小一時間かけてゆがく。火力に注意し、かき混ぜながら、表面はツルツル、芯まで火が通った、もっちりうどんにゆで上げる。

 つゆは、利尻昆布と、サバやカツオ、メジカ、ウルメの削り節を使用。毎朝、その日に使う分だけを、16代目尚史さんが作る。

 透き通ったつゆに、太いうどんが2本。すり下ろした土ショウガを添えるだけというシンプルさだ。

 ●販売実績:1日限定40食

 うどんをゆがくのに時間がかかり、何食も提供するのは難しいため、予約を除き、1日40食限定としている。早い日には、昼の12時半にはなくなり、目当ての一本うどんを食べられず、肩を落とす観光客も少なくない。

 同店で、最も人気があるのは、やはり一本うどん。次に、梅の香うどん(870円)、寒い時期は、ちからもちうどん(980円)と続く。

 一本うどんのシンプルさには驚く人も多いだろう。「今は、トッピングばやりのようですが、うちは、ショウガを添えるだけ。流行に惑わされず、伝統の味を守っていきます」と克子さんは力強く語った。

 ●企業データ

 店名=たわらや/所在地=京都市上京区御前通今小路下ル馬喰町918/事業内容=手打ちうどん、丼物の店。ハイシーズンは、北野天満宮で合格祈願が増え始める1月から、梅の季節、修学旅行が多い6月くらいまで。行列ができる人気ぶり。

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