注目の焼き肉チェーン店:安楽亭

1999.08.02 184号 9面

一〇坪・四テーブルの小型生業店からスタートし、わずか二五年で二三七店舗(直営二〇六・FC三一)・年商二四二億円の公開企業に飛躍した焼肉チェーン「安楽亭」。市場規模六〇〇〇億円・二万店舗と生業店志向の強い焼き肉店業界の中で、いまなお圧倒的強さでチェーン展開を加速している。そのパワーを追った。

安楽亭の創業は昭和38年。埼玉県蕨市に現社長の柳時機氏の母親が出店し、柳氏が「安い価格で安心して(安)」「くつろげる(楽)」をポリシーに育て上げた。屋号の安楽亭はその表れである。

その後、昭和60年の牛肉輸入の規制緩和にともない伊藤忠商事と資本提携。これを契機にチェーン展開を急加速し、平成9年には焼き肉業界初の店頭公開を果たした。現在の業績は別表の通り。焼き肉FRのリーディングチェーンとして業界独走の状況にある。

「規制緩和の恩恵と伊藤忠商事の信用力、それにわれわれのポリシーがマッチし、消費者の焼き肉に対する潜在ニーズが一気に開花した格好です」(広報担当者)

「すかいらーく」を手本に成長を遂げたと自認する安楽亭。その企業方針は一斉を風びした洋風FRそのもの。いわく「良質で安全な食材を」「適正な価格で」「独自の調理法やメニューを考え」「おいしく楽しく」「明るく清潔な店づくりをして」「真心込めたサービスを」という、ごく普通の題目である。

なかでも注力しているのが価格設定だ。スケールメリットと係数管理の徹底による“高品質&低価格”の訴求である。

「当チェーンの客単価は一七五〇円。一般FRの客単価一一五〇円に比べると高いが、一般焼き肉店より安い」「一昨年前から段階的に単価を引き下げているが、客単価は一向に下がらない」「単価を下げても、下げた価格分さらにオーダーが追加される傾向で、これはお客さまの『もっと焼き肉を食べたい』という欲求の表れだと受け止めている」

一昨年の消費税引き上げ時、カルビ、ロースの単価を四八〇円から四三〇円に引き下げ、昨年はさらに三八〇円に引き下げた。そして年末には枠を広げ三八〇円シリーズを一七アイテムラインアップ。ビールも一律五〇円引き下げた。にもかかわらず客単価は一七五〇円をキープ。一人当たりの平均オーダーは二・八皿が三・一皿に増加し、集客力を飛躍的に強めたという。これはまぎれもなく「焼き肉を腹いっぱい食べたい」とする消費者ニーズの表れだ。

こうした価格戦略が当たり、平成11年3月期は、売上高二四一億九〇〇〇万円(前期比二三・五%増)、経常利益一六億七三〇〇万円(同五七・四%増)と増収増益を達成した。この派手な数字は、新規出店の売上増と多店舗化のスケールメリットが大きく寄与したもの。だが一方、既存店ベースでは平均一・三%の増益と手堅い一面も垣間見せている。不況をしり目にもろ手に花の状況といえよう。

こうした実績を踏まえ、「ネットワーク五〇〇」という長期プランをこのほど打ち出した。これは、埼玉県の配送センターから食材の鮮度を落とすことなく配送可能な二時間圏内を新たなドミナントエリアに定め、エリア内の人口約五〇〇〇万人をターゲットに、二一世紀初頭までに五〇〇店舗のチェーン化と年商五〇〇億円を目標とするものだ。

多店舗化の柱となるのが居抜き物件を狙った改装出店である。これまでのノウハウ構築により、一般FRの衣替えならば三〇〇〇~五〇〇〇万円の改装費で出店が可能という(保証金除く)。一旦クローズした物件では不利との見方もある。しかしそのマイナス要素は、“焼き肉”の強い商品力と安楽亭のポリシーで十分に補えるという公算なのだ。

「農地出店など新規出店を一から手掛けるとオープンまでに一年以上かかりますが、居抜き物件ならば三ヵ月ぐらいで十分。タイミングを逃しません」

オリジナルの新規出店の場合、初期投資は一億円がメド。これでもほかの焼き肉店に比べると十分安い。

「焼き肉は素材がメニューだからごまかしがきかない。付加価値が弱いだけに品質が第一になります。できるだけコストダウンして、余力を高品質確保にあてる。そしてお客さまに安心しておいしく召し上がっていただく。これが焼き肉店の王道だと考えています」

多店舗化街道をひた走る安楽亭。今後は既存業態をベースに、高級焼き肉店やカジュアル焼き肉店など、焼き肉業態の多チャンネル化に乗り出す意向だ。

◆(株)安楽亭/本社所在地=埼玉県与野市上落合二‐三‐五、アルーサB館四階、Tel048・859・0555/創業=昭和38年/設立=昭和53年/資本金=二七億七五万円/代表者=代表取締役社長・柳時機/店舗数・業績=別表参照

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