御意見番・一人勝ち!スターバックス徹底検証:永嶋万州彦・永嶋事務所代表取締役
いまなぜカフェに参入ラッシュが起こっているかというと、それはもうかるからだ。昭和46~55年ごろの第一次カフェブームと、いまの時代環境はよく似ている。転職雑誌によると、いまはカフェの希望者が一番多いという。カフェの多様化が進むとともに、もうけの構造が変わってきた。ひとつの時代の変わり目と言えるだろう。
カフェは大別すると三極化する。(1)低価格コーヒーショップ(2)高価格カフェ(3)食べられるイートカフェ。それぞれのFLRコストが七〇%以下であることが、もうけの構造となる。Fは原材料費率、Lは人件費、Rは家賃比率だ。低価格コーヒーショップの場合、F三五%・L二五%・R一〇%で、人時生産性が三〇〇〇円を超えることで利益が出る。低価格コーヒーショップをさらに分極化させると、ドトールのような「低価格高回転型」「二毛作型」「物販併設の二期作型」「カフェテリア型」に分けられるが、ここに新しく「高付加価値型」というカテゴリーが入ってきた。
何かというと、FLRの中でR(家賃比率)を最大四〇%近くまで払える業態のことだ。この場合、原材料費八%、人件費一八%で合計七六%。七〇%を超えても、売上げがあるから利益が出る。「立地が最大の商品」だからだ。
スターバックス、銀座四丁目のル・カフェドトールやエクセシオールカフェがこれに当たる。二五〇円のコーヒーでは、一八〇円のコーヒーよりコストが五%以上下がる。
キーワードは高い家賃をいかに払えるかということ。カフェの中で高い家賃を払えるというのは、低い原価、低い人件費につきるだろう。そうすると売上げの二五%、坪七~一〇万円の家賃は容易に払える。スターバックスは七万円まで出していいと言っている。
マクドナルドなどのファストフードは五万円が最上位、これまでカフェは三万円という不文律を破ってきた。マクドナルドなどの場合は原材料費が三五%はかかる。しかも半額セールやセットでコストは高くなっているだろう。
本来は商品を高回転させるため、高立地政策でなければならないが、半面払える家賃には限界がある。そこにカフェが低い原価、低い人件費で乗り込んできた。マクドナルドにしてもこれは手が出ないだろう。マックカフェを始めたのも、このもうけの構造を変えようとしているためだ。
FLRの比率を可変にかえることでいくつかの業態が生まれる。いまのカフェのブームは、エスプレッソが売れているということではなく、それを使って商売が成り立ってきたというところに着目すべきだろう。
◆永嶋万州彦(ながしま・ますひこ)昭和18年東京都生まれ。(株)ドトールコーヒーでFC事業本部長として喫茶革命を指揮。常務取締役を経て独立。二毛作コンセプトを掲げ「プロント」の先駆を手掛けるなどユニークな発想で喫茶店の新時代経営術を説く。喫茶・カフェのフードメニュー強化を指導軸に幅広く活躍。