トップインタビュー:ぐるなび代表取締役会長兼社長・瀧久雄氏
インターネットで飲食店が検索できる情報サービスを一九九六年からいち早くスタートさせた「ぐるなび」は、登録店舗が一万店を突破。アクセス件数も月六十万件と、若者を中心に最も利用されているグルメ情報サイトとして人気が高い。今年3月には、運営母体の広告代理店NKBから分社化。電子商取引(eコマース)ビジネスにも乗り出し、食をテーマにショッピングモールを開設した。また、これまで培ってきた一万店以上の飲食店のネットワークを生かし、料理人のレシピのデータベース化や、メーカーや小売との企業間取引(BtoB)の仲介も始め、消費者・飲食店・企業の三者間を結ぶ食の総合コミュニティーサイトとして、新しい情報サービスを続々と打ち出している。
‐‐レストランの情報検索サイトとしてはパイオニア的存在だが、この事業を始めるきっかけは。
瀧 東京駅八重洲口の「銀の鈴の広場」は実はうちが造ったもの。そこにパソコンを使って結婚式場を紹介する情報コーナーを設けたのが、本格的に情報ビジネスを手がけるスタートだった。一八年前のこと。
七年前にインターネットが入ってきた時、私はこれが情報伝達のコストを二ケタ安くできる技術だと確信し、世の中に革命が起きると予想した。
ぐるなびを本気でやることを考えたのは、コストが安くなるなら映像が使える。レストランを決める時、店の雰囲気や店長の顔が見えると安心だ。レストランというのは販促費をあまりかけられない業種だから、逆にインターネットのメリットを生かせるターゲットとして最適だと思った。
‐‐登録店は集まったか。
瀧 JRの駅構内一〇ヵ所で、結婚式や二次会のパーティー会場を紹介する「JOYJOYパーティー」を展開していたので、そこに加盟していた四〇〇店が最初のデータベースになった。
登録料は、何千店か集まれば採算が取れるという最低ラインの月三〇〇〇円に設定した。
‐‐六年の間にユーザーの反応は変わってきましたか。
瀧 レストランに行く前にはインターネットで調べることが当たり前という社会現象になってきている。地図を確認したり、クーポン券があれば使う。また主婦もインターネットを使うようになってきた。
‐‐同様のサービスのサイトがたくさん出てきたが、御社との違いは。
瀧 他社はデータベース事業だが、うちの事業コンセプトはレストランのサポーター。いまは利用者のための情報が中心だが、レストラン側のお手伝いをしたい気持ちが強い。
営業も社内の人間が直接店を訪ねてやっている。店の悩みを聞いたり、こちらからの提案も伝えることができる。登録店の料理長による「旬の家庭料理レシピ」のコーナーも、われわれ一万一〇〇〇店の料理長と直接つき合ってきたからできたことだ。
その意味でいまから始める「BtoB」(企業間取引)は、ぐるなびの場合は自然な展開だと思う。私はよく、宣伝費を持たない商売が苦手な料理長に対して、「皆のアイデアをビジネスにするお手伝いをします」と口癖のように言う。無名の料理長でも自慢のレシピをひとつかふたつは持っている。それをメーカーなどの企業にネットで情報を伝えれば、レシピの商品化という店外商売ができる。
レストランとの深いコミュニケーションが生む産物みたいなものが、他社との差別化になっていくだろう。
‐‐そのBtoBの一環として、企業と飲食店をつなぐ「ぐるなびプロ」がオープンする。
瀧 レストランの経営をサポートすることを目的に、さまざまな問題を解決する情報を仲介する。食材、什器、人材、コンサルティングなど初回の加盟企業は九ブランド。今年度五〇ブランドを目標に今月スタートしたばかりだ。
‐‐今後の展開は。
瀧 今月6日に「IT時代の食のフォーラム」を開催する。いま具体的な食の提案では、料理人の派遣をホームパーティーに限らず、皆が徹底的に使えるような形で提案したい。例えば働く主婦に代わって、まとめて作ってフリージングしておけば、プロが作った料理をいつでも家族に出せる。
新しく始めたショッピングモールは、食にかかわるすべてのマーケットとして、こうしたケータリングのメニューもそろえていく。
総合的には、食を中核に、利用する人と提供する側、元になる食材や設備の企業など、三者間のコミュニケーションツールを追求していきたい。
いま流通では中抜きがはやっているが、私は中抜きではなく、これまでのメーカー側の「中」から、今度は購買層側に立った「中」になると考えている。
ぐるなびは徹底的に購買層の気持ちを反映させる仲立ちとして、コミュニケーションコーディネーターを目指していこうと思っている。
◇横顔
◆たき・ひさお=昭和15年東京都生まれ。東京工業大学理工学部卒業後、三菱金属(株)を経て日本交通文化協会・交通文化事業(株)(現(株)NKB)入社。現在、日本交通文化協会理事長、(株)NKB代表取締役、(株)ぐるなび代表取締役を兼任。
◇企業データ
◆(株)ぐるなび(東京都千代田区丸の内三‐四‐一、新国際ビル、03・3215・8818)資本金=三億一五七五万円/登録店舗数=一万一〇〇〇店/消費者の会員登録数=四万三〇〇〇人/月間アクセス件数=六〇万件/iモード月間アクセス数=三七〇万件/アドレス= http://gnavi.joy.jp/











