弁当4社の市場開拓戦略 「ほっかほっか亭総本部」ボリューム感を訴求

1993.02.01 21号 12面

供給過剰、過当乱立といわれているテイクアウト弁当ビジネスは、消費者にとってはそれだけメニュー選択の幅が広がるので、大いにメリットがある。

しかし、弁当を供給する側においては、競争競合が激化する中で熾烈な戦いを強られることになるので、厳しい状況に立たされる。

このため、力のないところ、意欲、工夫のないチェーンは淘汰される。現にそういう状況も起きてきている。

持ち帰り弁当ビジネスのパイオニア「ほっかほっか亭」をはじめ、「ホットフーズ」「いろは亭」「たきたて」の四チェーンにスポットを当て、出店および店舗オペレーションの実情をいろいろ探ってみた。

昭和51年6月に現社長の田渕道行氏が、「作り立ての温かいご飯の提供を」と思い立って、埼玉県草加市西町に現在の原点となる持ち帰り弁当店を開業、これがテイクアウト弁当ビジネスの嚆矢となった。

昭和53年4月、「ほっかほっか亭」FCシステムを発足。同年12月には早くも店舗数が一八店に、昭和55年12月、店舗三二三店。昭和57年8月、北海道から九州、沖縄まで三五の地区本部を完成。同年9月一〇〇〇店舗を達成。昭和59年3月、台湾に海外一号店をオープン。同60年1月、東京・関西・九州の三地区本部体制を導入。平成元年12月、店舗数二〇〇〇店を突破。平成3年12月、店舗数二一一八店舗、売上げ一一〇〇億円を達成。

周知のとおり、ほっかほっか亭は国内弁当チェーンビジネスの元祖であり、わが国最大の弁当チェーンであるが、ここ数年来弁当市場も競合店が乱立してきているのに加えて、市場が大きく成熟化しているので、チェーン展開も容易でなくなってきている。このため、かつては組織全体で年間二、三〇〇店の出店ペースで推移してきたものの、ここにきて大きくスローダウンしてきている。

「昭和61、62年ごろにかけて競合類似店が殺到しましたから、一時期は過当乱立で供給過剰になったという状況も起きたわけです。それで、どこも似たような出店内容ということで、特色のないところ、チェーンオペレーションの弱いところは淘汰されてきたわけです。

いろんな弁当ショップが登場してきて、市場を大きく賑わしたという点においては、意味があったわけですが、質やサービスの低下で、市場が崩壊した分は、コンビニの弁当が刈り取っていったという形になり、今ではコンビニもライバル店という状況になっているのです」(ほっかほっか亭総本部・管理統括部部長光成新平氏)。

テイクアウト弁当商品の市場性を当て込んで、大手CVSチェーンも競って弁当商品を導入したのであったが、文字どおりにその利便性から、独自の消費者を引き付けたのである。もっとも、コンビニエンスストアの場合の弁当商品は、電子レンジと連動させた形で提供されているものであり、作り立てのものではない。

このため、弁当チェーンは専門業態として、独自の生き方、市場戦略を強いられてきている。弁当チェーン最大の武器は、ご飯もおかずも作り立てのものを提供するということであるが、ほっかほっか亭はこの本来の強味を再確認していくとともに、地域に根ざしたメニュー導入も具体化させている。

昭和60年1月、全国を東日本と西日本、九州の三つのブロックに分けたのは、そのためで、画一的な味づくりやメニュー開発ではなく、地域ニーズや特性に合わせたマーケティングを展開している。

たとえば、東日本ではのり弁のニーズが強いので、この売上げ貢献度は大きいが、西日本では需要が小さいので、定番メニューとしては導入していないとか、あるいは、マツタケ弁当は東日本では余り売れないが、西日本ではよく売れるといったことがあり、こういったケースを考慮して、それぞれの地域において二割のローカルメニューをラインアップしている。

「チェーン展開だから全国どこにいっても同じメニューというのは過去の話で、消費者がぜいたくになり、市場が成熟化している現在においては、地域特性を考慮していかないと、材料の面でも売れ残ってロスが出ることになるのです。ですから、味づくりや食材の面にしても地域ニーズを考えたメニュー構成を具体化しているのです」(光成部長)。

食材といえば、最近は冷凍食品の発達が著しいので、市場ニーズに合わせて多様な半加工製品を取り込んでいくことができる。エビ、トンカツ、コロッケ、ハンバーグなどはその代表的なものであるが、これら半加工品の導入は、店舗での仕込みや調理時間を大きく圧縮する。

すでに五割ほどはこういった半製品の冷凍食品を活用しており、これによって店舗サイドでの生産性を大きく高めることに成功している。しかし、新メニューを導入していく場合は、複数の直営店でテスト販売をおこなって、その結果をみて、各チェーンへのラインアップを具体化している。

店頭のメニューの基本は、“ボリューム感”と“お値打ち感”があることとしているが、単品価格は四〇〇円から六〇〇円前後で、東京地区ではのり弁当(三三〇円)、幕の内弁当(六〇〇円)、焼肉弁当(四八〇円)などが人気商品だという。

店舗の立地条件はビジネス街をはじめ住宅街、ロードサイドなどで、平均客単価四三〇~五〇〇円として、一日の売上げが一五万円以上が見込めるところとしている。店舗面積は一四、五坪が標準で、投下資金二〇〇〇万円以内、FC加盟店の場合は、加盟金八〇万円、定額のロイヤリティが月額で九万円を徴収されることになっている。

現在の出店数は直営三八四店、FC一八四二店を合わせ二二二六店。九二年度の(2月決算)の売上げ一二五〇億円を見込んでおり国内最大の弁当チェーンとしての地位をゆるぎないものにしている。

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