多様化するテイクアウト寿司 「SUSHI花館」新たな外食文化の創造目指す
すしのテイクアウト(持ち帰り)ショップといっても、いくつかのパターンがある。小僧寿しチェーンのように徹底して「持ち帰り」だけの店舗形態、京bMは高級・大衆志向の両面作戦に加え、価格ゾーンでの市場分化をおこない、多様な業態開発を展開する。
アトムボーイはロードサイド立地で、ファミリーレストランタイプの回転ずしに、テイクアウト機能を付加している。テイクアウトは全体売上げ比二〇%と低いが、店舗の収益向上には貢献している。
同チェーンはこのほかに、新業態として、宅配+テイクアウトのすしショップもチェーン化を始めている。
テイクアウト(持ち帰り)すしというと、小僧寿しチェーンを連想する。小僧寿しは昭和三九年、大阪・粉浜に前身の「鮨桝」を出店以来、一貫して持ち帰りすしと多店舗化に取り組み、今では和製のファーストフードの代表的チェーン企業として、全国に二二〇〇店舗を出店、売上げも一〇〇〇億円(九一年度)を達成するビッグチェーンに成長している。
昭和四〇年「株式会社鮨桝」を設立し、多店舗化をスタートさせる。
同四三年、米国のファーストフードチェーンに刺激されて、FCを導入し、一〇〇店舗を目標とする。
同四四年、僅か一年で一〇〇店舗を達成し、全国へのFC展開を決定。
昭和四五年、「小僧寿しチェーン」として、FC展開を本格化。
同四七年、大阪に「株式会社小僧寿し本部」を設立。
同四八年、FC一〇〇店舗を達成。
同五〇年、FC加盟店五〇〇店舗を達成。
同五六年、二〇〇〇年店舗達成。
平成三年、チェーン総売上げ一〇〇〇億円を突破。
以上は、小僧寿しチェーンがテイクアウトすし市場の創造に取り組んできた企業ヒストリーとその転換点である。
小僧寿しがそれまですし業界が高級専門店(業態)として、特定の客層のみに対応していた「すし」を、ハンバーガーやドーナツのようなファーストフード的な売り方、しかも大衆価格の設定によって、より日常的な商品(業態)へと脱皮させた。
この小僧寿しの画期的なマーケティング戦略によって、テイクアウトマーケットを全国へと拡大していった。新たな外食文化の創造、小僧寿しのこの功績は極めて大きい。いわば、小僧寿しは日本の持ち帰りすしのパイオニアであり、マーケットクリエータといえる。
小僧寿しチェーンの成功に刺激を受けて、今や多くのテイクアウトすしチェーンが存在し、独自性を競い合っている。すし商品は根強いニーズがあるので、それだけマーケトへの参入が容易という見方もあるが、しかし、チェーン間の競争激化、市場ニーズの変化という点から、マーケティングのないワンパターンでの出店は生き残れないという厳しい状況になってきている。
つまり、単なる大衆性の追求、機能、効率的な売り方のみでは、成熟社会の消費者ニーズには対応できなくなってきているということである。
このため、小僧寿しもこういった視点に立って、二年前から店舗運営および出店戦略の全面的見直しをおこない。新たなマーケティング戦略を展開してきている。
「ディリー商品といいますか、日常的な定番メニューも大事な商品ではあるんですが、これだけでは市場を維持し、拡大していくことはできません」。
「消費者の価値感が多様化し、感性も豊かになってきている現在ですから、季節感を盛り込んだもの、ハレの目にふさわしいものとか、お客様の気分とか、こだわり、そういった要求に応えた商品の開発が求められてきているのです」(小僧寿しチェーン本部)。
今までの出店形態から大きくコンセプトを変えた「SUShi花館」は、こういった考えを体現したもので、全チェーンのうちすでに五二〇店舗が、この新タイプのすしショップとなっている。
すし花館は標準店舗面積三〇坪、住宅地での立地展開をメインとしており、家庭および個人需要にターゲットを合わせている。
メニューは従来の定番メニューもあるが、大きく異なることはネタを厚切りにしたのをはじめ、上生ちらし(六八〇円)やイクラ丼(七八〇円)すしとトロ付きザルそば(五〇〇円)、京の季節感を表現した歳時記弁当(八〇〇円)など、メニューのイメージを変え、幅を広げたことである。
この新タイプの出店策によって、消費者の高級志向を顕在化し、客単価も一〇〇〇~一五〇〇円と従来に比べ二、三割アップした。小僧寿しのヨミは当たったのである。