世界の味-美味探究 インド インドの味はスパイスの味

1992.07.20 8号 4面

インドの国土はアメリカの三分の一にすぎないが、人口は六億五〇〇〇万人強でアメリカの約三倍。インド人の八五%までがヒンズー教で、彼等は決して牛肉を口にしない。カーストの高い位にある人たちは厳格な菜食主義者である。残りのイスラム教徒は牛肉やラムを使って肉料理を楽しんでいる。

インドの味はスパイスの味に通じている、多種多様なスパイスがとれ味を演出する。この代表的料理がカレーである。地方により家庭によって大差がみられ、辛さも食べてみると汗がでるほど辛い。

《カレーの代表はチキン、ラム、えび》 カレーの種類もチキン、ラム、えびなどが代表的であるが、保存のきくドライカレー(ビンデ・キ・バシア)も喜ばれている。インド人の食事はナイフ、フォークによらず指で食べる。食事の最後に手を洗う水鉢が出される。そして最後にバーンを食べる。バーンは消化を助け、口の中をサッパりさせる。

主食は米またはパン、とくにサフランを入れた黄金のサフランライスは豪華で米の調理としては世界最高。パンはプリが最も親しまれている。プリが揚げパンであるのに対して、チャパティはパンの原型ともよべるものである。この他ナンとよぶ木の葉型のパンがある。ダンドールとよばれる深いかまどの壁につけて焼きあげる。

チャパティやナンに使われるものに、ギーと呼ばれるインド風バターオイルがある。ギーはインド料理をスパイスとともに特徴づけるものの一つで、水牛の乳からつくったバターを澄ませたものである。特有の風味がする。

日本になじみの深いインド料理にサモーサがあるが、小麦粉にこのギーを入れて薄くのばし、ひき肉などをあんとして三角状に包んで油であげたもの、温かいうちがおいしい。

インド料理の傑作の一つに菜食料理がある。ヒンズー教は牛肉はたべないが、乳製品を多く使う。野菜入りヨーグルトなどもその一つ。とくにおいしいのは野菜料理のマタル・パニルである。白いチーズの角切りとグリーンピースをたっぷりのスパイスで煮込んだものである。栄養豊富で肉いらずである。その他豆料理も抜群においしい。ヒンズーカレーは日本でも肉きらいな人に向く野菜カレーといえる。

インド料理で日本人好みは、はまぐりのカレー蒸し煮(ティスーリョ)、えびだんごのオイル焼き(ジンガ・キ・ティツカ)、舌びらめのロール焼き(マチュリ・キ・ティツカ)など。どれをとっても新鮮な材料である。熱帯インドは魚の宝庫ともいえる。

《多種多様な熱帯 フルーツの宝庫》 インドで忘れられないのが熱帯フルーツ。他の熱帯国と同様にココナッツを巧みに使いこなしている。マンゴーは青果のときは野菜として、熟せばデザートやチャツネとなり、貴重な存在である。その他バナナ、パパイヤ、ランブータン、ライチーなどいずれも安価である。バナナは市中に流通しているだけでも数十品種あり、一年中楽しめる。その他ジャックフルーツ、ジャムラム、パラミラ、タンジュリンなど日本にない味もある。そして最後にインドの誇りとするのは紅茶。いま全世界を制覇している。

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