“ラーメン”米国へ行く モス・フーズ・ウエスト社、ロサンゼルス中心に3店舗
モスバーガーの㈱モス・フード・サービス(本社・東京都新宿区箪笥町二二、ワタナベ・カズオ社長)は一九八九年12月にモス・フーズ・ウエスト社をロサンゼルスに設立し、翌九〇年7月にジャパニーズ・ヌードル・ハウス「MIKOSHI」一号店をロス市内にオープンすることで、米国本土進出をスタートした。
ハンバーガーチェーン店としては、店舗数でマクドナルドも上回る日本一のモスバーガーは、今年創立二〇周年を迎える。会長(創設者)のサクラダ・サトシ氏は日興証券の駐在員として一九六四年から一九六六年までの二年間ロス在住という経験をもつ。サクラダ氏とハンバーガーとの出会いはこの時であり、後年日本のハンバーガー王となるサクラダ氏のアイデア、そして成功への確信はすでにこの時期に培われていたものと思われる。帰国後、前社を退社しハンバーガーショップをオープンするための資金繰りに奔走するが新手の商売に金融機関からも冷たくあしらわれ、苦労の連続であったとロスのタイムズ紙、ビジネス欄のインタビューの中でも答えている。「水商売などに銀行は金を貸さない」と、銀行員からいわれ憤慨し、しかし成功への決意を新たにしたとも語っていた。
七二年に東京郊外にモスバーガー一号店をオープンするが当初は売上げが上らず過労で倒れることもあったという。当時のフードサービス業者の中にはこのハンバーガーに対して否定的な嘲笑を向ける者が多い中、典型的なハンバーガーからの脱皮を計り、日本人の味覚に合った商品開発とサービスに力を入れ、日本で最初のテリヤキバーガーのヒットを機に急成長、一九八七年にはマクドナルドの店舗数を越え日本一の店舗数を誇るチェーン店となったのである。
さて同社の米国進出は、いわゆる「ラーメン屋」のチェーン展開である。同社はすでにハワイにモス・バーガーを三店舗オープンしているが、米本土に対しては「ヌードル」をもって上陸してきたのである。
この点について米国法人モス・フーズ・ウエスト社の副社長スティーブ・イマイ氏は、「わが社としてもモスバーガーの米進出を行わないということではありません。実際ハワイでは三店営業していますし、ポテンシャルもあるものと思います。ただアメリカ本土でのハンバーガーチェーン展開となると売り手市場は飽和状態といっても良いでしょう。私達はアメリカ市場にあってファーストフードでありながらクォリティーの高いもの、そしてユニークなもの、ヘルスコンシャスなものをという点でMIKOSHIの商品を位置づけています。ロスを中心に現在は三店舗だが、11月にはLA国際空港の南、トーレンス地区に、そして九三年2月にはロングビーチに五店舗目をオープンする予定。またその他四ヵ所の店舗も検討中で、今後も南カリフォルニアから北カリフォルニア、そして東海岸へとチェーンを拡大する」‐‐と意気盛んである。
ロサンゼルスを中心に展開を進めているが、この点については「ロスという土地はヘルスコンシャス、コンビニエンスということに対する関心の非常に高い所で、それらはMIKOSHIのモットーでもあります」とモス・フーズ・ウエスト社社長のハシモトヨシオ氏は語っている。
現在店舗は、ハリウッド、ロサンゼルスダウンタウン、オレンジカウンティーの三カ所にあり、各店舗のロケーションにも左右されるが、約一〇%がアジア系、八〇%がコケージョン(白人系)、その他一〇%の割合の顧客層で、ロスには数ある個人経営の同種レストランが、日系人客層の多い中、一般米国人にアピールしているといえる。
メニューの内容は各種ラーメンが七種類、ヤキソバ二種類、その他チキン丼やチャーハン、サラダ、ギョーザ等で、値段はそれぞれ三~四㌦前後、チキンヤキソバやその他ラーメンのトッピングもボリュームたっぷり、これらは一号店オープン前のマーケットリサーチ、そして四〇〇人に及ぶ米国人からのサンプリングの結果であり、味つけについてはローソディウム(低塩分)、ローカロリー、ローファットと米国市場向けのアレンジがされている。
麺は地元業者がMIKOSHI特注を製麺し、茹で加減、焼き加減等のマニュアルの徹底を計るため計量器、クッキングボード等厨房器機も特注のものを完備している。
日系米国人であるイマイ氏は食品サービス業一五年のベテラン。マクドナルドに次ぐハンバーガーチェーン、バーガーキングで一〇年、メジャーのファーストフードチェーン、カールスジュニアで四年間、主にレストランオペレーションを担当、カールスジュニアでは、サンフランシスコの南、シリコンバレーの街サンノゼにおいてコーポレートマネージャーを務めていた。
イマイ氏は一三年前に日本からリサーチのためにバーガーキングを訪れていたサカモト会長と知り合い、バーガーキング社在任中四回にわたってサクラダ氏のツアーの案内役を務め、MIKOSHIオープンにあたり、オペレーションマネジャーとしてモス・フーズ・ウエスト入社、その後副社長に抜ってきされ現在に至っている。
アメリカのハンバーガーを日本に持ち込み日本風なアレンジで成功しているモスバーガーチェーン。今度は日本のヌードルをアメリカでどう拡めてゆくのだろうか。今後大いに注目したい存在だ。