地域ルポ 野方(東京・中野区)下町風情残し賑わう商店街
西武新宿線野方(東京・中野区)。ターミナルの新宿から七つ目、鈍行で約八分。一日当たりの乗降者数は、二万六〇〇〇人。昭和30~40年代の面影を残す狭い街だが、駅周辺には商店街が縦横に展開しており、住宅と商店が混在する。
商店の広がりは住宅街を浸食する形で展開するが、北は新青梅街道、東に環状八号線、南には神田川の支流、妙正寺川が流れるので、駅を中心にして二〇〇m以内にまとまっているという感じだ。商店は小規模で、生鮮食品、雑貨、サービスなど最寄り品店の集積が進むが、飲食店舗では地元生業店に交じって、マクドナルド、モスバーガー、デニーズ、ドトールコーヒー、養老乃瀧、村さ来、庄や、弁当ショップ京樽、牛丼太郎などのチェーン店が目につく。
本町通り。モスバーガー野方店(中野区野方五-三三-七、電話03・3339・1491)。営業時間は午前10時~午前0時。
二〇年前出店のFC店だが、昨年6月にオーナーが代わった。駅から離れた立地なので、集客力は十分でない。
駅前にマックが出店したので、最近は特にこの傾向が強まっている。1、2月は売上げもダウンした。
店舗面積約八〇坪。カウンター二一席・客単価五〇〇円。月商二五〇~三〇〇万円(推計)。
本町通りとみつわ通りの角地。ドトールコーヒー野方店(FC、中野区野方五-二二-九、電話03・3330・3400)。営業時間は平日午前7時30分~午後8時。日祭日は午前8時~午後8時。
一九九五年12月オープン。店舗面積は一二・五坪。客席数二二席。クリーニング店が廃業し、ビル化したので出店。
買い物客や地元住民の利用が大半を占めるが、昨年10月ごろから集客力が低下傾向。客のニーズが変化、四〇〇円から五〇〇円の価格でも、客はゆったりとくつろげる店を求めるようになってきているのではないかと判断している(FCオーナー)。月商六〇〇万円。
駅改札口を出ると、平面交差の踏切を起点に、南に伸びる「野方駅前商店街」。踏切を渡れば北側、新青梅街道方向に伸びる「北原通り」。
車一台が通れるほどの狭い商店街だが、店舗の集積が進んでいるので、地域密着の商店街らしく、下町風情の賑わいを呈している。
だが、地元のある商店主によると、地域にスーパーや百貨店など大型の商業施設がないことから、地域外からの集客が見込めないこと、また、店舗の老朽化や経営者の高齢化が進んできていることなどから、年々客足が少なくなってきているという。
駅の乗降者数でみても、年々減少傾向にあるといい、地域の活力が低下してきているようだ(野方駅)。
このため、飲食店舗でも低価格志向、ファストフード機能の業態でなくては、収益を上げることはむずかしくなる。
踏切を渡って北側に伸びる「北原通り」。この通りは「新青梅街道」につながるが、「丸正」「マルサングループ」「サガミ」など中小の食品スーパーの出店が目につく。
飲食チェーンは横道に入ったところに「養老乃瀧」一店が出店しているのみ。
マクドナルド野方店(中野区野方五-三一-一二、電話03・5373・7333)。営業時間は午前7時30分~午後10時。昨年12月28日オープンのニューフェース。
駅改札口を出て商店街入口のベストロケーション。以前は喫茶・ケーキの店だった。店舗面積七四坪。一階オーダーカウンター、二階七九席。
ハンバーガー一三〇円、チーズバーガー一六〇円、てりやきマックバーガー一九〇円の低価格商品などで、客足は途切れることなく、強い集客力を発揮している。
月商一五〇〇万円前後(推計)。
デニーズ野方店(中野区鷺宮一-九-一一、電話03・3330・2431)。二四時間営業。
野方駅から北原通りを歩いて新青梅街道へ。地域唯一のロードサイド立地のファミリーレストラン。九三年12月オープン。
店舗面積は九三坪。客席数一一二席。駐車三五台。年商二億四〇〇〇万円。
駅前商店街に立地する牛丼太郎野方店(中野区野方五-三〇-一九、電話03・3310・7621)。(株)深澤(本社=東京・練馬区)の直営店。
十数年前から多店舗化を進めてきているが、西武新宿線やJR中央線沿線の中野、高円寺などに、計八店舗を出店するのにとどまっている。
野方店の店舗面積は約五坪。客席数(カウンターのみ)一四席。
メニューは牛丼並二五〇円、大盛り三五〇円、牛皿セット五〇〇円(牛皿、ライス、生卵、お新香、サラダ付)、なっとう丼並二〇〇円、大盛三〇〇円(各味噌汁付)。
大手チェーンの吉野家、松屋に比べ価格はさらに低価格志向だ。客単価三〇〇~四〇〇円。月商二〇〇万円(推計)。