名古屋版:シリーズ・今年の業界動向を探る(6)焼き肉編

1997.07.21 131号 16面

町のあちこちに焼き肉店が出始めたのが戦後まもなく。以来、駅裏のホルモン焼き屋のイメージを払拭しながら五〇年。無煙ロースターの開発や最近の牛肉の輸入自由化によりファミリー層や若い世代に広がり、今や全国に三万店。市場はますます活況を帯びている。今回は、焼き肉店を全国に展開する大手外食チェーン「焼肉屋さかい」と二〇年来焼き肉チェーンを続けている「れんが屋」に、焼き肉業界の流れとその対応や将来性を聞いた。

「うち独自の発想に基づいた“日本の焼き肉店”をつくりました」と話すのは、東海地方を中心に驚異的なペースで全国へ九〇店舗を展開する(株)焼肉屋さかいの広報課課長、林信二氏。まず考えたのは、焼き肉店のマイナスイメージをぬぐい去り、新たな焼き肉ファンを開拓すること。保守的ではない若者と三〇代ファミリー層にターゲットを絞った。

店は「一度見たら忘れられないハデ」(林氏)な外観にし、店内は逆に竹を用いて落ち着きと清潔なイメージを徹底させた。さらにロードサイド店として駐車場を完備し、ぐんと市場を広げた。

(株)れんが屋の今泉敦子社長は二〇年前に女性二人で小さな焼き肉屋さんを創業。女性の発想を生かし、いち早く無煙ロースターを導入。中高年齢サラリーマン層をターゲットに高級化をめざし、観葉植物を設置し清潔さをモットーに、「快適な店づくり」を行う。さらに、従業員の確保に奔走、雇用形態を整えた。

両社ともターゲットにする客層は異なるが、新しいイメージの焼き肉店を模索する姿勢は共通していたといえる。

単独店では肉を解体し調理できる専門の料理人を置くのが当たり前だが、チェーン店となると効率化を図りコックレスシステムを確立している場合が多い。

焼肉屋さかいはというと、各チェーン店の厨房には専門のコックを配し、味にこだわるとともに、スケールメリットでリーズナブルに提供。「おいしさ」と同時に「安さ」を追求、チェーン化を成功させた。

一方、れんが屋は仕入れに重点を置き、和牛にこだわり品質の良い食材を常に開拓する方針を貫く。

今泉社長は、焼き肉屋の差別化は、ローコスト対策よりも日本人の繊細な嗜好にマッチした「おいしさ」に尽きる、と話す。

料理に関してどんな新しい試みがされているのか。

れんが屋では女性客を意識して一四年前には、それまでシンプルだったメニューにサラダを導入、カクテルも始めた経過がある。さらに最近では、ヘルシー傾向に合わせ和食を焼き肉とジョイントさせて会席コース(五〇〇〇円~九〇〇〇円)をもうけた。塩タンをレモンと大根おろしでアレンジしたり、器を選んで高級化を図っている。

焼き肉屋の命ともいうべきたれについて焼肉屋さかいでは「たれの味はエスニックというより日本人好みに甘く」(林氏)し、れんが屋は「好みに地域差がある。吟味しながら各店各地域それぞれの味を作り出せばいい」と考えている。

焼肉屋さかいでは焼き肉のほかに、ホタテ、エビなどの海鮮の揚げ物や焼きガニ、焼きマツタケと季節メニューを積極的に取り入れるなど、ファミリー客が多いだけにメニューの幅は広い。

焼肉屋さかいは、客単価も二三〇〇円と居酒屋並みの設定。アルコール売上げシェアは全体の約一〇%を占めるほど。若い客層をターゲットにしているが、洗練さやファッション性は求めず気軽に入りやすい店づくりにしたことも功を奏した。

また同社は人的資源を重要とし、特にソフト部門の充実を図るなど人事政策に力を注ぐ。そのためか離職率は低く外食業界には稀有な存在だ。「特に焼き肉にこだわらず」(林氏)、確立した外食チェーンの企業システムを武器に「もっとおもしろい業態があればいつでも乗り換える」と、ひょうひょうたる構えだ。

大きな浮き沈みもなく、少しずつ変貌しながら安定推移を示してきた焼き肉業態。またここで、ブームの入り口に立ち過渡期を迎えている。

◆焼肉屋さかい=(7月31日)桑名市大央町、桑名南店

◆ロッソえびすや=(11月末)各務原店、(12月末)岐阜市内

◆壱番屋=(7月16日)熊本・ワンダーシティ南熊本店、(17日)愛知・昭和区八事店、(22日)宮城・名取南店、(23日)北海道・豊平区豊平三条店、(25日)広島・福山駅前店、(28日)香川・高松屋島店、(8月5日)福岡・博多区東那珂店

◆カフェ・ド・クリエ=(7月24日)武蔵小山店、(25日)大口店、(28日)南本町店、(8月4日)静岡・堂島店、(7日)小田急相模原店、(8日)名古屋・栄三丁目店、(13日)千葉・我孫子店、(21日)東京・本郷通り店

◆木曽路=(8月4日)東京都足立区・西新井店

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