話題の飲食施設 アトレ恵比寿(東京・渋谷) 都市リゾートを演出
10月1日、JR恵比寿駅に、駅機能に加えオフィスと商業施設を一体化させた地上一四階建て・塔屋一階の駅ビルがオープンした。事業主体は東京圏駅ビル開発(株)(本社=東京・渋谷)で、ビルの一階、三~六階、七階の一部に、物販・飲食・サービスなど一一七店舗で構成する「アトレ恵比寿」が展開、三年前に開業した近接地の恵比寿ガーデンプレイスに次ぐ大型施設として、新たな賑わいをみせている。
このビル建設は、三年前から東日本旅客鉄道と東京圏駅ビル開発の両社が共同で進めていたもので、ビル完成後は東京圏駅ビルが主体となって運営管理する。
ビルは地上一四階、塔屋一階の規模だが、一階と二階の一部、三階~六階、七階の一部に「アトレ恵比寿」、七階~一四階にかけてはオフィスというフロア構成。
恵比寿は山手線と埼京線の二線が乗り入れているが、駅機能は一階が改札口、二階プラットホームという展開になっている。
ビルは“駅舎”を包み込む形で完成しており、ビルの低層部分を電車が往来するというユニークな構造になっている。
駅機能とショッピング機能の二つの動線を区分するためのビル構造で、土地の立体的活用例としても注目されている。
一階からはアトレ三階にエスカレーターで直行でき、商業ゾーンへのアクセスの利便性を訴求している。
アトレの施設コンセプトは「ガーデニング」で、自然と人間の接点(交流)を目指す“都市リゾート”(オープン空間)を演出している。
これはまた「太陽・花・水・木・風」の五つをキーワードにしており、三階に「ジャルダン広場」と「ブリーズ広場」、四階に「フォンテーヌ広場」、六階に「オリーブ広場」、そして屋上に「ソレイユジャルダン」と計五ヵ所のオープン空間を展開することで、ガーデニングの精神を表している。
恵比寿は隣接の営団地下鉄日比谷線を合わせて一日平均三二万人の乗降者があるが、アトレのメーンターゲットは、年齢に関係なく成熟した感性を持ち、大人の分別でクレバーな消費行動がとれる人、すなわち「新大人」をイメージしているという。(駅ビル開発)
物販・飲食・サービスを合わせて初年度売上げ目標一五〇億円。果たして思惑通りに集客し、成果を上げることができるかどうか、今後の推移が注目される。
卵料理「ロムレット」(電話03・5475・8428)。二〇坪、四〇席。手打ちうどん「杵屋」、信州そば「そじ坊」などをチェーン展開する(株)グルメ杵屋(本社=大阪)の直営店。
ロムレットは卵料理(オムライス)の専門店で、大阪、東京を主体に約四〇店を出店している。おすすめメニューは、揚げ茄子とミートソースのオムライス一〇〇〇円、海の幸と森のきのこのオムライス一五〇〇円(各サラダ、デザート、スープ付)、チキンとほうれん草のドリアオムライス(クリームソース)九八〇円など。
ビール、ワインなどのアルコールも置いている。客の七割は女性客だが、土・日には家族連れも増える。客単価は一二〇〇円どまり。売上げは月商一〇〇〇万円以上(目標)。
◇六階レストラン街
▽串カツ八丁味「串の坊」((株)串の坊/三三席)▽釜めし居酒屋処「藩」((株)西洋フードシステムズ/六〇席)▽イタリア料理「ラーサルーテ」(ゼンケンフーズ(株)/七四席)▽とんかつ「新宿さぼてん」((株)グリーンフーズ/五五席)▽そば・うどん「家族亭」((株)家族亭/五七席)▽らーめん「恵比寿らーめん亭」(東京アールビー商事/三〇席)▽卵料理「ロムレット」((株)グルメ杵屋/四〇席)▽欧風カジュアルレストラン「つばめグリル」((株)つばめ/九〇席)▽カフェレストラン「ガーデニングカフェ」((株)ダイナック/八〇席)▽中国料理「丹鶴」(東京魚国(株)/八二席)▽日本料理「かもがわ茶寮」((株)鴨川グランドホテル/一〇六席)▽ビヤレストラン「銀座ライオン」((株)サッポロライオン/一二九席)▽天ぷら「銀座ハゲ天」((株)渡辺ハゲ天/五四席)▽寿司「すし京辰」(ビイービイーアンドイー(株)/四一席)▽ロシア・欧風・チーズ料理「マトリョーシカ」((株)ナガエフーズ/三四席)
六階レストラン街には別掲の通り和・洋・中合わせて計一五店舗が出店するが、業態の幅は広く女性好みの西洋料理、オジサンがアフター5に利用するビアレストランまでバリエーションに富んでいる。
この利用形態は、平日の日中はランチ目当てのサラリーマンやOL、買い物の主婦という流れになるが、土・日は家族連れやカップルが増える。
個性を主張した専門店が多く、客にとっては選択が容易という特性をみせている。しかも質の高い料理を提供していながら、価格は低価格志向で客単価は一〇〇〇~五〇〇〇円の範囲。六〇〇〇円を超える店は見当たらない。
会社の接待利用もあるが、大半はポケットマネーでの利用ということのようだ。女性客が六、七割という女性上位の店も多く、やはり店づくりやメニュー面で、女性客をどう吸引するかが、大きなポイントのようだ。
カフェレストラン「ガーデニングカフェ」(電話03・5475・8430)。四六坪、八〇席。六階フロアの中央部「オリーブ広場」に位置しており、人の流れが最も集中するところだ。
ここは「ガーデニング」をテーマにした開放的な空間で、天井高が八mもある吹き抜けになっている。この店もこのテーマに沿って、グリーンをディスプレーした内装でオープンなつくりになっている。
「店のコンセプトは“ソフトリー”で気取らずに、家庭のダイニングルームのような気分で、ご利用していただきたいと考えております。ワインも多く取りそろえておりますので、それに見合ったサイドディッシュで、お楽しみいただければと思います」(広田庸一店長)
客層は女性客が六、七割を占める。客単価昼一〇〇〇円、夜三〇〇〇円。月商二〇〇〇万円目標。
経営はル・マエストロ、ティキティキ、サンバレイなどイタリア、フレンチ、トロピカルレストランなど二〇〇店舗以上を展開する(株)ダイナック(本社=東京・新宿、サントリー系列)で、ガーデニングカフェは初めての業態。
法善寺串カツ八丁味「串の坊」(電話03・5475・8414)。法善寺といえば、大阪のミナミの法善寺横丁をイメージするが、その屋号の通り、大阪生まれの串カツ専門店だ。
鶏、牛、魚介類、野菜など新鮮な素材を使い、炭火で焼いて提供する。これを客が八丁味のオリジナルのたれにつけて食べる。たれは何種類かのスパイスと岩塩、フグの粉分なども入っているというもので、三重県の伊賀上野の工場で作らせている。
客層は若い女性客(グループ)から中高年のおじさんまで多様。土・日はファミリー客も多く来店する。客単価昼一三〇〇円、夜五〇〇〇円。月商一五〇〇万円以上(目標)。
欧風カジュアルレストラン「つばめグリル」(電話03・5475・8429)。中高年層にとっては懐かしい響きの店名。創業が昭和5年。かつてSLが全盛期だった時代の「特急つばめ号」の勇姿をイメージしたネーミングだ。
本店が銀座にあり、食通家ならずとも若い世代にも知られた存在だ。徹底した手作り志向のレストランサービスで、奇をてらわないオーソドックスな運営とメニュー政策が、幅広い客層に支持されている。
昼はランチメニューで賑わい、夜は食事客に加えアルコールで一品料理を楽しむという客も多い。
店舗面積五三坪、客席数九〇席。客単価昼一〇〇〇円、夜二〇〇〇円。月商目標三〇〇〇万円。
日本料理「かもがわ茶寮」(電話03・5475・8433)。六一坪、一〇六席。鴨川グランドホテル(千葉、本社=東京)の直営店。姉妹店が溝口、錦糸町にあり、恵比寿は三店目の出店。
料理は格調高いホテルサービスをバックグランドに、房総の山海の素材を主体にしたもので、ランチメニュー(一〇〇〇円~一九八〇円)から特選コース料理(二八〇〇円~四八〇〇円)までをそろえる。
ランチタイムは午前11時から午後3時まで。メニューは山海天婦羅膳一〇〇〇円、茶寮豆富膳一二〇〇円、茶寮和牛弁当一四八〇円、松花堂御膳二五〇〇円など八品目を提供。
夜の客単価四〇〇〇円。月商二〇〇〇万円が目標。
◇施設概要
・施設名/アトレ恵比寿
・所在地/東京都渋谷区恵比寿南一-五-五
・事業主体/東京圏駅ビル開発(株)
・オープン/平成9年10月
・フロア構成/一階の一部、三~六階、七階の一部
・売り場面積/三八〇〇坪
・店舗構成/物販八二店、飲食二四店、サービス一一店、計一一七店
・営業時間/物販・サービス午前10時~午後9時、飲食午前11時~午後10時30分(各一部店舗を除く)
・休業日/年七日
・初年度売上げ目標/一五〇億円
・駐車場/二二〇台
◇飲食店舗フロア構成
<一階>▽ファーストフード「ベッカーズ」▽カフェ「エクセシオールカフェ」
<二階>▽居酒屋「魚馳走亭ちゃんぽん」
<三階>▽おむすび・弁当・惣菜「ゑびす大黒」▽おこわ・弁当「成田屋」▽とんかつ・弁当「新宿さぼてん」▽中華惣菜「聘珍樓」▽京風持ち帰り寿司「百花撰」▽フローズンヨーグルト「TCBY」▽ベーカリー&カフェ「神戸屋キッチン」▽ビヤカフェ「リオンドオール」
<四階>▽カフェ「リーズナブルカフェ」
<五階>▽カフェ「マウカメドゥズ」
<六階>(別掲)