名古屋版:ズームイン繁盛店 話題の「ラーメン横綱・港店」 徹底した屋台の味

1998.06.15 154号 24面

週末には一日三五〇〇人が来店、列ができるほどの「ラーメン横綱・港店」。月商五〇〇〇万円を稼ぎ出す超繁盛店のラーメン屋さんが、ついに名古屋に出現した。外食専門家の間ではすでに話題にのぼっていて、一度ならずも店を訪ねるケースが多いという。そこで、今回はラーメン横綱・港店におじゃまし、(株)横綱本部の山浦陽介営業本部長に話を聞いてみることにした。

昨年6月に国道一号線沿いの安城に第一号店から数えて一八番目のラーメン横綱をオープンした(株)横綱。続いて今年にかけ、名古屋市港区と刈谷市へ出店。京都の吉祥院店を皮切りに大阪へもじわじわと拡大していったラーメン横綱はいよいよ、八号店目の四日市店以来、再び東海地区への攻勢が始まる様相が強い。

さて、国道二三号線を車で走ると、十一屋交差点西にずっと遠くからでもひと目でわかる、並みではないハデな大看板が見えてきた。これが港店。「ラーメン」の真っ赤な文字がひときわ目をひく。とにかくだだっ広い敷地に店を構える。

敷地面積六〇〇坪、客席一一〇席の店内に入ってまずとまどったのは入り口付近の広い空きスペース。正面には壁いっぱいに大きく引き伸ばしたゴルフ場の写真がかけられていて、窓は天井から床まですべてが透明なガラスだ。温泉旅館の玄関先とよく似ている。

山浦さんに聞くと「お客さんに開放的な雰囲気の中で味わっていただきたいから」との返事。というのも、昭和52年に創業させた河野次和社長は脱サラ後屋台のラーメン屋さんをしていた人で、外で食べる屋台と同じ快適な開放空間を提供したいという願いが店づくりに生かされたのだ。

さらに、社長の屋台ラーメンへのこだわりが運営上の基本となっていると話す山浦さん。そのあたりに好調のポイントがあるようだ。話を進めていった。

「ゆっくり行けばいい、地道に行けばいい」。社長は常に社員にこう話す。あえて出店計画も戦略も持たず、いい物件が見つかれば出店するという横綱のペースをくずさない。むずかしい経営論を考えるよりも、屋台時代にお客さんと向き合ってその声に耳を傾けることの方が大切だと考えている。わかりやすい説得力のあることばで社員に気持ちを伝える。

日本人にとって国民食ともいえるラーメン。ラーメン屋さんには老若男女の区別なく、家族連れで、カップルで、一人で、TPOに応じていろいろな組み合わせで訪れる。

「ラーメン屋であることを忘れるな」という社長は、そんな幅広い客層への細かい対応をきっちりと行う。広く万人に好まれる味を開発。また、のれんをつけたり、ちょうちんを下げたり、ボックスシートは赤いビニール製と、洗練されたイメージを遠ざけた、だれもが入りやすい庶民的な店づくりにした。

したがって接客教育も心得だけの自然体サービスで、ファミリーレストランのような過剰なマニュアルはない。

基本メニューは一アイテム

さらに「スピード感」が何より大事な世界。例の大きな透明な窓ガラスを通して車が駐車場に入るやいなや料理にとりかかる。客が席に着くと三〇秒で早くもラーメンが運ばれてくる仕組みだ。

基本メニューはラーメン一アイテム(並五九〇円)。やはり発想は、屋台時代にラーメン一種類しか作っていなかったことだったが、今は生産性を徹底的に追求した結果、包丁もまな板もない調理場に調理人一人で対応する。

バリエーションメニューとしては、大六九〇円、チャーシューをのせて並七九〇円、大八九〇円を用意。さらに、ピリ辛餃子(二六〇円)、おむすび(九〇円)、キムチ(並一六〇円)、ビールの友の豚キムチ(五二〇円)があり、セットものはいっさいない。

味は豚骨スープの醤油だれが基本。もちろん、社長の屋台時代に試行錯誤を繰り返して培った独自の味だ。五年前に始動したセントラルキッチンから、ラーメン横綱の直営二〇店舗へ毎日配送されている。最新式の設備を導入し、ラインはすべてコンピュータ制御の大量生産化を図るが、作り方の基本ノウハウはあくまでも屋台の味にこだわっている。

◆「ラーメン横綱・港店」(名古屋市港区宝神一丁目三八、電話052・398・4527)=営業時間午前11時~午前5時の一八時間営業、敷地面積約六〇〇坪、店舗面積一〇〇坪、客席数一一〇席、平均客単価七五〇円、月商約五〇〇〇万円

◆「(株)横綱」(京都市西京区桂乾町一一-六、電話075・394・4527)=資本金一〇〇〇万円、創業昭和52年

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