うまいぞ!地の野菜(6)群馬県現地ルポおもしろ野菜発見「モロヘイヤ」

1998.07.06 155号 13面

「どんどん大きくなるから栽培は簡単に見えるけど、夏には虫が付くので結構大変なんだよ」と、今朝早く若芽を摘み取ったばかりのモロヘイヤを指さす本多夏夫さん(八七)。

ハウス内は三〇~四〇度C、夏を先取りした暑さだ。モロヘイヤはもともとが高温地帯の野菜、気持ち良さそうにすっくと背伸びをしているかのように見える。

「最近気付いたんですけど、この野菜は太陽が好きなんでしょうね。朝は東に、夕方は西のへと太陽の動きに合わせて向きを変えて行くんですよ」

傍らで言葉を添える奥さんの礼子さん(六三)。力仕事で忙しいご主人に代わり毎朝、朝食前にモロヘイヤの若芽を摘み、出荷する。

「一度は冬にも収穫しようと温度を上げたところ、背丈は低いのに開花し、結実して失敗に終わったこともありました」。夫婦でモロヘイヤ栽培を始めて足掛け六年目。さまざまの試行錯誤があったようだ。

本多さんが住むこの一帯は、織物産業の低迷から長年栽培し続けていた桑畑の転換が求められていた。六年前、地元農協のJA富士見川の指導で「見たことも聞いたこともない不思議な葉っぱ、モロヘイヤの栽培をすることになりました」。

高温を好むモロヘイヤは当然にハウス栽培となり、新たな設備投資が必要になる。

「ちょうど良いことにパイプハウス建設には県から一反一五〇万円で無利子の助成金があり、思い切ってやることに決めました」

約一町五反の田畑を所有する本多さんはコメ、麦、玉ネギ、ホウレンソウを栽培している。今まで夏のホウレンソウ作りの難しさに悩まされていたが、夏に強いモロヘイヤに切り替え、冬だけの栽培にした。

目下、夏になると虫の発生に悩まされるが、人手がないため薬散布より「燃やそうと思っています」と半ばあきらめ顔の礼子さん。 「二人とも高齢の上、私は孫の送り迎えと食事の支度をしながらモロヘイヤの世話です」と言いながら慌ただしく自分専用の車を駆って、露地栽培のモロヘイヤ畑に向かって行った。

JA富士見村園芸課長の下田明さんの話によると、「たまたまうちの会員が雑誌を見て種を取り寄せ栽培、少量だったが市場に出荷したが何の反応もなし。ところが夏も終わるころ、テレビで紹介されたのがモロヘイヤ」だったらしい。反響は大きく、たちまち市場での価格は急騰。さっそく翌年から本腰を入れて栽培をしようと講習会を開催したところ、一〇〇人を超す受講者があった。

「モロヘイヤが何たるかも知らず、こちらも勉強しました」

原産地は中近東から北アフリカで、エジプトの王様の病気を治したのがモロヘイヤのスープといわれるほど栄養豊かな野菜。4月に播種すれば6月下旬には主枝の若葉を摘んで食べられる。おまけに摘めば摘むほどワキ芽が伸び、摘みきれないほどだ。

「農業従事者の高齢化で、六〇代がほとんど。軽量野菜に移行したいと思っていたので、生長は早く、手間のかからないモロヘイヤはぴったりの野菜だったのです」

現在、二〇〇人の栽培者。四㎏入りケースを一日平均三〇〇ケース出荷している。

「競業者が増え、もっぱらの悩みは初期のころより値が半分以下になったことでしょうか」

■生産者名=JA富士見村(群馬県勢多郡富士見村田島一一、電話027・288・54 75、FAX027・288・7274)

■販売方法=市場出荷、宅配

■価格=二〇〇g一〇〇円前後+消費税+送料

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