百歳への招待「長寿の源」食材を追う:ライ豆

2004.06.10 107号 9面

英語ではライマ・ビーン。熱帯アメリカが原産で、南米ペルーではB・C五〇〇~六〇〇年ごろの遺跡からライ豆の遺物が出土。メキシコでも同時期に記録が見られる。

この豆がヨーロッパに伝わったのはコロンブスの新大陸発見以降のこと。ペルーの首都・リマ付近で見つけられたことからライマ(LIMA)・ビーンと呼ばれるようになった。

ライ豆は元来暖地性の野菜であって、霜のない期間が四カ月以上ある所でないと収量が少なくなる。また高温で乾燥すると落花が多くなる。また雨の多い所は不適となる。

原産地では多年生だが、栽培する場合は一年生としている。生育には高温を要求し、軽い霜でも害を受けやすい。種子の発芽は一六度C以上でないと難しい。

ライ豆の種実は特有の芳香があり、豆類の中では最も美味なものとされ、皇帝豆とも呼ばれている。アメリカでは近年消費量が増大し、栽培面積もいんげん豆の三分の一程度に拡大。日本でも新しい野菜として栽培されるようになっている。

ライ豆の成分は、乾燥品で一〇〇グラム当たりエネルギー三四九キロカロリー、水分一一・九%、タンパク質二二・九%、脂質一・八%、糖質五四・三%、繊維五・三%、灰分三・八%など。無機質ではカルシウム七五ミリグラム、リン二〇〇ミリグラム、鉄六・一ミリグラム、カリウム一九〇〇ミリグラム。ビタミンではB1〇・四八ミリグラム、B2〇・一八ミリグラム、ナイアシン一・九ミリグラム。

成分的にはタンパク質が多く、繊維分にも恵まれ、また糖分も多く、豆類の中では優れている。数多くみられる豆類の中で、味の面からもよく、煮ると甘く香気に富む若莢は豆類の中ではナンバーワンといわれるほど人気が高い。

味の良い点と暖地での生産性の高い点に注目され、アフリカの熱帯地域でも重要な食糧となっている。またアメリカ南部やミャンマーを含む東南アジア地域でも生産が増大し、つれて消費面でも拡大が期待されている。

豆には有毒成分を含むものもみられるが、水溶性であるから、よく加熱してゆで汁を捨てれば毒性の問題は全くないといえよう。

乾燥豆は一晩水に浸し、よく煮て、水を取り替えて料理に用いるとよい。また青豆として煮込みや塩ゆでにして食べる場合もみられるが、このような食べ方は日本だけにみられる習慣であり、香りも良く美味。完熟豆でないので青酸を含む危険は全くない。

ライ豆の生産量は、味が良いため世界的に拡大方向にあり、特にアフリカでの生産増加は望ましい。日本でもライ豆の美味が普及すれば消費は急増が期待されよう。

(食品評論家・太木光一)

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