おはしで防ぐ現代病:スイートコーンのフィトグリコーゲンに抗腫瘍効果

2003.10.10 99号 14面

スイートコーンに含まれるフィトグリコーゲン(植物性グリコーゲン)に抗腫瘍効果のあることが、弘前大学医学部保健学科の佐々木甚一教授とキユーピー(株)(栄養試験センター木村守研究員ら)の共同研究で確認され、10月11日に東京・府中の東京農工大学で行われる日本農芸化学会関東支部大会で発表される。

フィトグリコーゲンとは水溶性の物質で、これを多く含むスイートコーンやホタテの缶詰の調味液が白くなるのは、フィトグリコーゲンの一部が溶け出したもの。

グリコーゲンはグルコースからなる多糖類の一種で、ヒトを含む多様な生物の肝臓や筋肉にエネルギー源として貯蔵されている。トウモロコシでは「スイート種」に含まれ、同じトウモロコシでも甘味を増すために品種改良された「スーパースイート種」には含まれていない。

同じ多糖類の抗腫瘍効果・免疫復活効果としては、キノコのβグルカンやメカブのフコイダンなどが知られている。佐々木教授らはすでにホタテ由来のグリコーゲンの抗腫瘍効果を確認・発表しており、さらに今回、スイートコーン由来のグリコーゲンでも同様に抗腫瘍効果を確認したという。

◆実験の経過と結果

(1)フィトグリコーゲンをマウスの腫瘍に直接投与したところ腫瘍が小さくなったことから、一連の試験を実施した結果、意外にもスイートコーンそのものを経口摂取した時に、より強い抗腫瘍効果が認められた。

(2)乾燥したスイートコーン一ミリグラムをマウスに一週間経口投与した後、がん細胞を移植したところ、スイートコーンを与えない対照群では三週間後、一〇〇%腫瘍が形成されたのに対し、投与群では腫瘍が形成されたのは二〇%で、その大きさも対照群より小さくなった。

(3)同様の実験をさらに二回繰り返したが、いずれもがん細胞の増殖が抑制され、マウス一匹に対し一日わずか一~数ミリグラムで効果が得られることも分かった。

(4)また、がん細胞を移植した後に乾燥したスイートコーン一ミリグラムを一週間経口投与した場合でも、がん組織の増殖が抑制されることを確認した(グラフ参照)。

効果の主体である成分を取り出し、直接投与して良い効果が得られることは稀ではないが、食品そのものの状態で、しかも普通に食べることで効果が得られた点でユニークな結果と考えられる。

スイートコーンが抗腫瘍効果を発揮する理由についてはまだ解明されていないが、マクロファージの活性化を含む免疫力の向上が関与していると推察され、今後の研究でのさらなる解明が待たれている。

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