4億年前から生き延びてきた長寿生物、「サメの不思議」に迫る!

2002.10.10 86号 2面

サメは魚類の中でも板鰓目に属する古代生物。四億年以上も生き延びてきて、しかも個体も長寿。調べてみると、このサメはかなり不思議な特徴を持つ生物であることが分かる。サメの生体の専門家に話を聞き、サメ関連の文献にあたったところ、以下の三つの不思議が浮かび上がってきた。

◆不思議その1 強力な免疫機能

「サメは、強力で効率的な免疫機能の持ち主です。傷の治りも早く、感染症にかかることもほとんどありません。サメの免疫機能に関しては一九六〇年代、当時マイアミ大学にいたM・シーゲル教授がパイオニアで、サメの免疫グロブリンが、いつも血液中を循環して攻撃準備を整えているという特異性を持つことを発見して以来、さまざまな研究が進められています」(宮城県本吉郡 ふかふか村 及川幸一取締役副社長)。

いまではサメの強力な免疫機能は、細菌、ウイルス・化学物質以外の物に対しても有効な抗体をつくっていると考えられている。

◆不思議その2 がんにほとんどかからない!

サメの腫瘍の報告は、すべての魚についての腫瘍の報告の一%にも満たないとされる。一〇〇万匹に一匹、あるいはそれ以下という比率だ。

フロリダ州の実験で強い発がん物質を入れたプールで何年もサメを飼ってみたが、サメは一つも腫瘍を作らなかったという報告もあるという。これは強力な免疫機能とサメ軟骨に含まれる血管造成抑制機能による。

◆不思議その3 骨がなく、すべて軟骨

「サメの軟骨は全体量の六~八%で、他の生物と比べ断然多いのです。人間を含め、他の動物は石灰化した骨でできた骨格を持っていますが、サメの骨格はほとんど軟骨でできています」(『サメの自然史』著 日本大学 谷内透教授)。その軟骨には、豊富なコラーゲンなどのタンパク質やムコ多糖類であるコンドロイチン硫酸が含まれているのだ。

◆ムコ多糖類ってなあに?

直訳すると「粘りを持った多糖」。多糖は、単糖(代表的なものはブドウ糖)が、10個以上つながったものだ。人間では、軟骨・角膜・皮膚・関節液・腱・肝臓・腎臓に多く含まれていて、やはり細胞と細胞の隙間を埋めている。ムコ多糖とコラーゲンがなければ人は「人間の型」にはならない。

保水性・粘性・潤滑性が高く、肌の張りを保つ、各関節のクッションとなるなど、重要な役目を果たしているが、加齢とともに減少されることが確認されている。

◆コラーゲンってなあに?

動物の骨や皮などに含まれるタンパク質の一種。人間の場合、すべてのタンパク質の30%、皮膚組織の70%を占める。他のタンパク質と異なり細胞の外にあって、細胞同士をつなげる、細胞というレンガを埋めるセメントのような役目を担っているので、構造タンパク質と呼ばれている。コラーゲンがなければ身体はバラバラになってしまう。

コラーゲンが互いに橋をかけあいしっかりと結びつくことを「架橋」といい、その数が多いほど強靱な弾力性、柔軟性が生み出される。しかし、加齢によりコラーゲンの新陳代謝が衰え古いコラーゲンがなかなか分解されなくなると「老化架橋」と呼ばれる余計な架橋がどんどん作られるため、逆にコラーゲン同士の結びつきが強まりすぎて組織が硬化し全身にさまざまな問題が起こる。特にコラーゲンの多い骨や軟骨、腱、皮膚、血管で多くの障害が起こるので、骨粗鬆症や関節炎、リウマチやぎっくり腰、肌のシミ・シワの発生、動脈硬化などに発展する。予防には毎日の食事でコラーゲンの材料をどんどん補給し、コラーゲンの合成を高める適度な運動をすることが大切だ。

◆ムコ多糖類を期待するなら、プラスサメ軟骨 「日本栄養・食糧学会」で発表

サメ軟骨は昨今、米国食品医薬局(FDA)が初の薬品ではない自然物質の治療実験薬として公式に使用を認めたことなどから、その効能が急激に注目され出している。人間の身体に有効なタンパク質・カルシウム・リン・アミノ酸・コンドロイチン硫酸などを豊富に含んでいる。特にムコ多糖類のひとつであるコンドロイチン硫酸は、心筋梗塞・脳卒中・肝疾患・関節炎・神経痛・腰痛や肩こり‐などの改善・毛髪増量、皮膚のシミとり、視力回復、免疫増量などに効果があるとされ、最近は特にがん治療の場面で、腫瘍細胞の抑制に、免疫力を低下させない鎮痛剤にと積極的に活用されている。

7月に札幌市において開催された「日本栄養・食糧学会」では、日本医科大学の七戸和博講師、京都府立大学の佐藤健司助教授、国立感染症研究所のムワナタンブエ・ミランガ客員研究員らの実験発表によると、さらに朗報があった。サメ軟骨のガン細胞増殖抑制は認められてきたものの、投与量の多さ(人間の体重1キロあたりサメ軟骨1グラム)が患者の負担になっていた。

実験では、ガン細胞を移植した10匹のマウスに、アメリカのウイリアム・レーン博士開発のサメ軟骨粉末を水に溶かして得た抽出物をエサの0.4%に混ぜ7週間投与したところ、通常のエサ投与の同マウス10匹は2匹が死亡したのに対し、全個体生き延びた。この比率は60キロの人間に換算すると1日に20グラム程度という。これまで投与量が多かったのはサメ軟骨中の有効成分が絞り込めなかったからだが、今回の実験は抽出物を得る段階でこれを試みており、今後はがん治療の場面にこの結果が大いに活用されそうだ。

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