食の救世主「梅酢リサイクル」とは? 和田又『梅櫻塩』と『梅白塩』
赤紫蘇で真っ赤に染まった梅を塩漬けし、土用干しする。歳時記にもある伝統的な「梅干し」づくりの風景だ。梅は新春に咲き競い、初夏にたわわに結実し、それが色づく頃の梅雨に塩漬けされる。
昔から料理の塩加減に「塩梅(あんばい)」という表現が使われるように、梅は人々の暮らしに深くかかわってきた。時には伝承される薬効も加わって、なくてはならない必需品になった。
この梅漬けから出る副産物が梅酢である。食塩・有機酸が多量に含まれることから、これまで厄介者扱いされ、その用途は限られていた。
ところが、実は梅酢はクエン酸・梅フラールなどの生理活性物質が豊富に含まれるスグレものなのだ。そこで山口県下関市にある田中醤油醸造場(下関市清末町、0832・82・0012)は、梅酢の有効利用に挑戦。その梅酢から脱塩・減圧濃縮・精密ろ過などの技術を応用して、低塩分・高有機酸含有の塩製品を商品化した。江戸時代創業の食品卸、(株)和田又(下関市長府扇町、0832・48・5029)を通して、人にやさしい『梅櫻塩』『梅白塩』を販売している。
なめてみると、カドの取れた丸みのある味。一度、梅の植物細胞の中に入ってきた梅酢から作る塩だけに、天日塩などと違って、人の身体にやさしい塩に変身しているのだという。(株)和田又の藤川豪特販部部長は「お年寄りや子供さんたちにぜひ使っていただきたい塩」と推奨する。
これまで捨てられていた梅酢をリサイクルして作る塩。環境によく、低価格ででき、しかも無添加だ。「梅酢の中に豊富に含まれているクエン酸などが、塩にも入り込んでいるため、添加物を入れる必要がないんです。また、天日塩のように鉱物系のミネラルを多く含んだ塩と違い、植物性のミネラルを多く含んだ塩なので身体に吸収されやすくなっています」(藤川部長)。捨てられていたものをリサイクルして身体にいい天然の塩をつくる、これぞまさに“梅酢リサイクル”。人にも地球にもやさしいいい話だ。
同社では、この梅酢を使った、無添加の山菜水煮商品『ベンリーシリーズ』なども販売している。同品は厳選良質の山菜を、徹底した品質管理のもとに添加物を一切使用せずに製造した安心な山菜水煮。一般に保存液として使われるpH調整液にも、紀州南高梅の「濃縮梅酢」が使用されており、素材の持つ風味・食感が自然のままに楽しめる。
「濃縮梅酢」とは、紀州南高の白梅酢を脱塩し、一〇倍濃縮・特殊ろ過した天然のクエン酸二八%の健康酢(pH値二・〇±〇・五、塩分五%)。この健康酢を八〇〇倍希釈した液(pH値三・八~四・二)を保存液として使用することにより、天然の有機酸(クエン酸など)が幾重にもガードして品質を保つ。
通常は保存料としてリン酸系の薬品がpH調整液として使用されるが、どうしても薬品の臭いや酸味が残り、素材の風味やうま味を低下させる。天然の梅酢をpH調整材として使用すると、それをほとんど感じないので、素材の持っている風味・食感を自然のまま保つことができ、料理をおいしく仕上げられるという。