百歳への招待「長寿の源」食材を追う「クローブ」健胃作用も

1998.09.10 36号 24面

クローブは中国で昔、皇帝の前に出るときに口に含んだとされる消臭剤。シナモンといえばコーヒーに添え、香りを楽しむ芳香剤。ともに臭いの魔術師として実力派だが、それ以外にも大いに効能がある。

(食品評論家・太木光一)

クローブの原産地はナツメグやメースと同じインドネシアのモルッカ島である。この島は長い間アラビア人に独占されていた。やがて支配はポルトガルに移り、一七世紀にはオランダが完全に領有するところとなった。

独占の利益を亭受するため、クローブやナツメグを不法に栽培・販売・所持した者は、すべて死刑に処せられた。一八世紀に入って、フランス人が苗木の密輸出に成功し、独占市場はついに崩壊した。現在は熱帯圏諸国で産出。

クローブはフトモモ科の常緑高木で高さ二〇メートルぐらいまで成長する。日本では丁字と呼び親しまれている。茎の頂に小花が群がってつき、紅色の花筒の先に白い花弁が開く。

クローブとしてスパイスに利用される場合は、ピンク色の蕾のうちに木に登って摘みとる。組織内に丁字油と呼ばれる揮発油を蓄える室がある。口に入れるとわずかに舌を麻痺させるような刺激性の味がする。

蕾は一週間天火で乾燥、茶色に変色しその形が釘に似ているので日本では丁字(チョウジ)と呼ばれている。

香りはバニラ風の甘味ある強い刺激性が感じられ、香辛料として甘味・辛味両用に使用される。特に肉の臭み消しと香りづけに欠かせないものとなっている。

花は毎年咲かず二年に一度、島によっては四年に一度、花をいっぱいにつける。利用茎にしてホール(原型のまま)・粉末・丁字油とに分かれる。ホールは豚肉料理・ハム・焼き豚・焼きりんごなど、そのまま刺して使用する。カレーやシチューにも二~三本入れられる。

粉末は菓子などに練り込んで使用、アップルパイ・プディング・魚のフライ・カボチャのマッシュ・グラタンソースなど広く使われる。

丁字油はクローブを水蒸気蒸留して得た精油で、主成分はオイゲノール・テルペン類・バニリンほか。芳香を持つため香水・化粧品・歯磨き粉ほか薬用にも利用。

中国では口臭を消すため皇帝の前に出るときクローブを口に含んだといわれ、日本の仁丹の香味の主体もこのクローブと、消臭効果大。

中国ではオイゲノールは腐敗を防ぐ効用が高いとして、防腐・駆風・歯痛止めとして評価されている。また五香粉の主要材料の一つとして広く家庭でも使われている。

また中薬大辞典によると、

(1)抗菌作用…大腸菌・緑膿菌・疫痢などの菌に対して効果的(2)駆虫作用…回虫の駆除に威力が大きい(3)健胃作用…丁字は芳香健胃剤といえよう。食欲増進・消化能力を活性化する(4)歯痛止め…虫歯を殺菌し、痛みを取り去る‐‐など。中国ではクローブ・丁字の根・茎・丁字油はすべて漢方薬剤と指定されている。

薬膳食法の材料として丁香陳皮乳煎・丁香密米飲・丁香肉桂紅糖ほか多くのメニューに利用され、胃・腎臓・脾臓の機能強化に役立つとされ、しかも少量用いるだけで効果が大きく、安価なので入手もしやすい。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら