ガンを抑制する噂の食べ物を追求
現在、ガンで死亡する人は日本人の四人に一人の割合にのぼっている。“恐るべきガン”なだけに我々の関心は高い。ガンはたった一個のガン細胞が分裂増殖したもの。そのたった一個のガン細胞は、正常細胞を発ガン物質が刺激することによって起こってしまう。発ガン物質は大気中や食べ物にも含まれ、体内に入ることが避けられない物も少なからず存在する。そこで発ガン物質を抑制する食べ物が登場、話題になっている。「ガンを予防するこの食品」「ガンに負けないこの食品」といった情報に一種のブームが起こったが、その真偽のほどはどうなのか。探求してみよう。
みそは古来より日本人の食生活に溶け込み、現在でも年間一人当たりの消費量は約五キログラムに上っている。みそと胃ガンとの関係を研究した国立ガンセンター研究所の故・平山雄博士は一三年間にわたる研究の中で「みそ汁をまったく飲まない人に比べ、みそ汁を毎日飲む人は胃ガンによる死亡率を低く抑えられる」ことを明らかにした(図1)。また同じ調査結果を喫煙習慣の有無で分けると、喫煙者は非喫煙者に比べ明らかに胃ガンによる死亡率が高い。しかし、喫煙者でもみそ汁を毎日飲む人の死亡率は、非喫煙者でみそ汁をまったく飲まない人よりむしろ低くなっている(図2)。
この報告は、みそ汁またはみその中に発ガンを抑制する物質が含まれている可能性を示唆しているが、それがどんな物質であるか、どのようなメカニズムで発ガンを抑制するのかはまだ解明されず研究はこれからだ。
(資料提供:みそ健康づくり委員会)
昨年9月下旬に京都で開催された第五六回日本癌学会総会で、帝京大学薬学部・山崎正利教授がバナナのガン抑制効果について発表した。
山崎教授の発表によると人間の身体にはもともと病気から身体を守る力、つまり抵抗力、専門的には“生体防御機構”が備わっている。これは様々な機能が複雑にからみあって成り立つが、最も基本的な役割を果たしているのが白血球(マクロファージ、好中球)が中心となって働く“免疫システム”と呼ばれるものだ。
この白血球の働きを活発にする成分をバナナは豊富に含んでおり、またその成分はバナナを食べるだけでも体内に取り入れられ、ガン腫瘍の増殖も抑制されることがマウス実験で証明された。さらにその有効成分はある程度まで分離が可能だという。しかし現段階ではその有効な成分のすべてが明らかになっておらず、今後の研究に期待が集まりそうだ。成功すれば最終的にバナナから副作用のない制ガン剤をつくることも可能だという。
バナナは栄養価の高い食べ物として昔から知られている。事実、スポーツ選手も試合前の食事にバナナを好んで食べているケースが多い。バナナにはやはり秘めたる底力がありそうだ。
(取材協力:(株)エヌ・デー)
朝起きて朝食前のまず一杯、朝食と一緒にまた一杯、会社に着いてホッと一杯、昼食の合間にまた一杯。このペースで一日を過ごせば福がある。
緑茶に関しても昨年の日本癌学会で緑茶を一日一○杯飲む人は肺ガン、大腸ガン、肝臓ガンになる確率が低くなると報告された。
注目されるのは茶の渋み成分カテキンだ。カテキンは抗菌、抗酸化、消臭の作用を持ち、様々な所で有効な働きをしている。なかでも抗酸化とは身体の酸化を抑える働きなので老化防止になり、これがつまりガン抑制作用となる。
たとえばマラソンなどの有酸素運動は呼吸で酸素を取り込む量が増え、体内にガンや老化現象を引き起こす活性酸素を作ってしまう。活性酸素は通常悪い働きをするわけではないが、一定程度を超えると悪性の働きをしてしまう。そこで、カテキンを体内に入れると活性酸素を取り除くことが出来るというのだ。このカテキンを最も多く含むのが緑茶である。
中国から伝わり日本でも長く愛されてきた緑茶。現在では(株)伊藤園が一九八五年に初めて缶緑茶を開発して以来ヒット商品となり、形は変わりつつも愛飲されている。「渋谷の街を歩きながらも緑茶を一杯」という新習慣は一日一○杯を可能にする術かも。