百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「クレソン」食べる総合ビタミン

1997.08.10 23号 14面

日常の食生活に長い間親しまれているが、その食効はあまり知られていない。しかし、この2品目はいずれも栄養の宝庫で食べる総合ビタミン食といえる。食べやすく特に高齢者におすすめ。

(食品評論家 太木光一)

クレソンはアブラナ科の多年性水生植物で、原産地は中部ヨーロッパ。日本名でミズガラシとかオランダガラシと呼ばれている。クレソンはフランス語名である。

江戸時代にオランダ人が自給用に種子を持ち込み、各地の水田の畦や谷川のほとりに野生化したものがみられる。その後明治中期に再度日本に持ち込まれた。数多い洋菜の中で歴史も古く、知名度の高いものの一つである。

栽培は容易で成長も早い。暑さに弱いため4月に播種、6~7月に収穫。また9月に播種、11月ごろ収穫。夏場と冬場をさけてローテーションを変え一年中収穫することが可能である。

最高品質のクレソンは濃緑色・鮮緑色、ついで黒色となる。パリッとした感じで、あまり伸び過ぎていないものが良品である。保存にあたっては、水を含ませて冷蔵庫に入れておくと長持ちする。

クレソンは数枚の葉をつけたまま、茎とともにサラダに利用されたり、洋風料理のツマにされる。爽やかな香りと辛味を持った味が好まれる。

クレソンはステーキ・サンドイッチなどに添えられているが、ステーキだけ食べてクレソンを残す場合が多くみられる。クレソンは単なる彩りやアクセサリーではない。大切な栄養野菜なのである。野菜の少ない北欧ではクレソンを有色野菜として珍重する。ステーキでクレソンを残さないようにしたい。

クレソンの成分をみると、カルシウム・鉄・ビタミンA・B1・B2・Cをはじめ亜鉛・銅などの含有量は非常に多く、食べる総合ビタミン食品ともいえよう。市販の割高なヘルスフードよりはるかに優っている。ビタミンは薬剤の姿ではなく自然のままに摂るのが最高。

美肌を保ち貧血を防ぐビタミンCの含有量を他の果実や野菜類と比べると、一○○g当たりで、クレソン六○mmg、グレープフルーツ四○mmg、みかん三五mmg、キャベツ四四mmg、レタス・セロリ六mmgとなり、クレソンの含有量は多い。

特に現代の食生活に不足している鉄とカルシウムに恵まれ貴重な存在である。カルシウムでみればヨーグルトや牛乳よりも多い。

料理のつけ合わせとして食べるクレソンの分量は少ないが、日本料理ではゆでてゴマ和えやおひたしにするので相当量食べられる。

その他の利用法として、生のまますりつぶし裏ごしして、レモン汁や生クリームと合わせて緑色のソースを作り、パテなどにかけるとすばらしい味となる。

また淡水魚料理用ソース材料にも使われる。魚のにおい消しと香りづけには効果的。スープの色づけにもよい。冷製スープの場合、彩りも良く、ちょっと刺激的な味で夏場のスープに最適となる。

クレソンは成分的に優れており、入手も容易で価格も安い。健康長寿食品の中でもベストテン入り。もっと見直し、生活に取り入れたい。

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