食卓にシャンソンを 真夜中のシャンソン談議
子どものころからピアノのレッスン、唄のレッスン、語学のおけいことあれこれ、よくもこれほどと思うぐらいやってきた。そしてついには、コラ・ヴォケールのピアノ伴奏者、ジャン・ピエール・レミさんを友人に紹介していただき、何年間かパリまでレッスンに出向いたこともあった。
先日、あるパーティーの後、二人のシャンソン歌手が家に寄り、午前一時くらいまで、シャンソン談義をした。ひとりは熱心に毎月、何回かレッスンを受け、地味な努力をし続けていた。もうひとりは全くレッスンにつかず、ギタリストに伴奏をしてもらって勝手に唄っているようだ。シャンソン界も派閥があるのか、どの先生についたらとか、だれが自分の唄のタイプかと迷っているうちに、今にいたってしまったようだ。
私も弾き語りで、ひとりで練習していたときもあった。しかしあるとき、小節を見はずしてミスっていることも知らず、恥をかいた。やはりプロで唄っていくためには、自信をつけるにも安心を買うためにも、レッスンが必要だと思う。
そして何よりも三○○○円、一万円というチケットを私のために買ってくれる方々に対して、練習、レッスンは欠かせない。私の母などは「おまえの唄を聞くために、よくも何千円も出してくれる人がいるね」という。その気持ちの中にはきっと“しっかり頑張って唄いなさいよ”という励ましが隠されていると思う。
いまの時代、若い人たちはシャンソンを知らない。これは、唄っている人たちに引きつける力がないせいかもしれない。
シャンソンは息が長い。一生懸命、練習していい唄を歌い続ければ、もっとメジャーになると私は思う。トップに石井好子さん、芦野宏さん、深緑夏代さんと大先輩が立派に先を歩いているのだから。
そのずーっと後だけれど、しっかりいい唄が歌えるように固めていきたい。歌っている人たちがお互い足を引っぱり合うことなく、ときにはシャンソン談義をしたり、勉強会をしたり、刺激し合い、いい影響を与え合って、シャンソン界を支えていければと願っている。
(シェ・ピアフ主宰 淡谷智)