ヘルシー企業の顔:日研フード・越智宏倫社長 美食小食で老化制御
「加齢によって醜くなるというのは偏見です。歳を重ねるごとに教養を得て身なりも若い時より美しくなる。加齢によって美しくなるんです」と語る日研フード(株)・越智宏倫社長。老化制御の研究を続けることで美しく歳を取る方法を習得したのだろうか。ならばぜひとも教えて頂きたい。「健康」を仕事にした同氏にじっくりお話を聞いた。
何を食べたら健康になるとか、こんな運動をしたら健康になるとか、精神的にプラスの発想をしたらガンでも治るとか、こういう考え方は短絡的過ぎます。三位一体の考え方で、「栄養」と「活動」と「考え方」、この三つのバランスが取れていなければいけない。三つのどれが欠けても病気になってしまう。
私は三歳の時からずっと喘息でね。それに高等学校の時には結核にもなってね。喘息と結核というのはまずいんです。喘息は栄養過剰がダメで、結核は栄養を取らないと治らない。にっちもさっちも行かなくなってね。
病気のおかげで食べ物の知識には年季が入っていますよ。ナメクジがいいと言われればオブラートに包んで飲む。けれど気持ちが悪いからゴボッと戻ってくる。これはまいった! でもナメクジは喘息にいいんだと母が毎日くれるんです。えっ、効果があるかって? 全然効果ナシですよ(笑)。ナメクジはまだまだ序の口、マムシの黒焼きも食べました。何匹食べたか分からないぐらいね。だから私はマムシの天敵です。それからモグラも。これも黒焼きね。
こんなふうにあらゆることをしたんだけれど、結局は普通の食べ物が大事だと気付いて、それからは「栄養、栄養」ばかり言っていました。私の中学時代のあだ名は「栄養」ですよ。
健康な身体を保つためにはただやみくもに身体にいいと言われる物を食べるのではなく、身体に足りない栄養を摂取するということ。足りている物をいくら食べてもダメです。なにが自分に足りない栄養なのか正しく知ることが肝心です。そのために何が足りないのか測定する方法をわが社で開発しました。これは血液から測定する方法です。これからは予防医学が重要になると思いますから、成人病検診でこの測定をして「あなたの食生活ではこの栄養素が足りないからもっとこれを食べなさい」と指導出来るようになるといいですね。
この測定は恐いですよ。今、目の前にいる美しい女性がこのままの食生活を続けると、一〇年後はシワだらけだと分かってしまうんだから。四〇、五〇歳でシワだらけになってしまう、これは身体の酸化のスピードが早いからです。足りない栄養素を足してやれば身体の酸化、つまり老化は遅らせることができるのです。老化と成人病、ガンはほとんど一緒だから、老化を遅らせれば、成人病にもなりにくい。老化は止められないが遅らせることはできるんですよ。
老化を遅らせるために私は「美食小食」を唱えています。
美食というのは自分が本当においしいと思う物を食べるということ。高価な物を食べるのではなく、魚をおいしいと感じる人は魚を食べ、野菜がおいしいと感じる人は野菜を食べる。
美食の条件はおいしいと思う物で新鮮な物。新茶も、新米もうまいでしょう。食品も人間の身体と同じように時間がたつにつれ老化、酸化をします。老化したものをいくら食べても健康どころか老化促進にもなりかねない。
現代は食品工業の発展のおかげでフレッシュな物が食べられるようになりました。昔はそんな技術がないから古くなった物を食べていた。だから人間の身体も傷み、昔の五〇歳はおじいさん、おばあさんに見えたでしょう。
それが食品の加工度が良くなりフレッシュな物が保存できる。食品工業は老化防止に大変役だっているんです。
身体が弱く病気を遍歴してきた。だからこそ好きなことが分かった。私は「健康」の仕事をするのが好きなんです。好きなものを仕事に出来て私は最高の幸せの一つを手に入れています。
身体が本当に健康になったのは今年が初めて。六二年かかりました。ポンコツ車を引っ張り回してきたようなものです。やっと健康になって心から笑えるようになりました。自分も人並みの健康をつかみ、人に健康になってもらう知恵もつかんだ。
今後はその知恵で社会に貢献していきたいですね。自分が持ったままこの世にサヨナラしてはいけない。だからこれからは人の模範になって八五歳までは現役で勤めさせてもらう。むちゃなことはせず、一生懸命やって世界を舞台に健康面での貢献をしていきたいです。
●プロフィル
一九三四年兵庫県生まれ。六五年日研フードを設立、代表取締役社長に就任。
八五年日本老化制御研究所を設立、所長兼任。八九年農学博士所得。
九二年日本文芸大賞特別賞受賞。九五年紺綬褒章受章。著書に「若さを長持ちさせる本」(PHP研究所)、「治る、治る、あなたもきっと治る」「できる、できる、あなたもきっとできる」(産能大学出版部)、「老化制御の理論と実際」(日経事業出版社)、「老化制御食品の開発」(光琳)、「これでアレルギーが克服できる」(かんき出版)など多数。