検証と対策 「ヤセル」で太るダイエット市場、野放し広告にご用心

1997.01.10 16号 9面

ますます過熱する女性のヤセ願望。それに油を注ぐのがダイエット関連の広告合戦だ。だが、女性雑誌をにぎわすそれらの広告には、不当表示や誇大表現など問題が多いことが、(財)日本レジャースポーツ振興協会の調査で分かった。被害報告も相次ぐ中、行政の取り締まりは追いつかず野放し状態。同協会は昨年10月、日本広告審査機構などに、痩身広告の正常化を要望した。また消費者が冷静な目で広告を見ることも必要とされている。

「めざせ、ダテキミコ!」。(社)日本植物油協会の調査によると、『うつくしい元気人』の条件は「常に前向き」で「まわりも一緒に元気にしてくれる」人。それをイメージする女性の著名人は、第一位が二年連続で伊達公子さん、次いで陸上の有森裕子さん、女優の山口智子さんが挙げられた。

「ポジティブでパワフル。芯が強いのに、イヤミな感じのしない、さっぱりした女性というのが、“平成小町”の条件のようです」と同協会の閑野氏は語る。

この調査では「ダイエットが必要か」という設問もされているが、これに女性の八割が「必要」と答えている。その理由は「きれいになりたい・かっこよくなりたい」から。

スーパーモデル信仰はやや下火になったものの美しいものにはやはりアコガレる。「スリムがキレイ」は女性の意識としていまだ根強いようだ。

『飲むだけで、みるみるヤセル!』。そんな夢のような話があるかいな、と思いつつ「騙されてもいい」とつい飛びついてしまうのが女心。女性誌に掲載されている広告の約八割がダイエット関連で、その市場は一兆円を超すといわれる。

ところが、「スリムがキレイ」を追い求めた結果、拒食症に過食症、不妊症に骨粗鬆症など、皮肉にも“うつくしい元気人”像から遠ざかってしまう女性が増えている。また、ダイエット関連の広告には、内容と異なる誇大表現や薬事法に違反する不当表示など問題のあるケースが多い。

8月には、中国産のダイエット茶に精神障害を起こす可能性がある食欲抑制剤の、表示なき混入が発覚した。通販広告を見た子どもが、親に隠れてそれを買うと、未成年の麻薬犯罪などへの発展も危惧される。

また、素人の女性の水着写真を勝手に掲載したりなど、女性の人権問題が問われるトラブルも多いようだ。

日本レジャースポーツ振興協会では、無作為に選んだ六種類の女性誌の一〇種類の広告を調査した。すると、ダイエット食品は医薬品的な効能・効果をうたうことは薬事法で禁じられているにもかかわらず、「×××の働きで体内の余分な脂肪を溶解し、体外に排出する」など、違反的な表現がすべての広告から見つかった。

ダイエット食品などの広告では、“編集タイアップ記事”という独特のスタイルで展開するケースも多い。薬事法上、一般読者に対する啓蒙・教育を目的としたものは“編集記事”とみなされ、その表現方法や展開については「表現の自由」として憲法で保障されている。ところが読者には広告記事と編集記事との見分けがつきにくい。

同協会は「不適切な表示で消費者を惑わす広告主の責任は大きいが、多くの読者をもつマスコミの責任も免れない」と、(社)日本広告審査機構などに、広告内容の正常化を求める要望書を提出し、広告媒体のチェック体制と表示内容の確認を求めた。

厚生省では昨年3月に薬事法に基づいた表現基準を発表してはいるが、イタチごっこで取り締まりが追いつかないのが現状。

ダイエットは他人には言いづらいので被害者数は相談件数よりずっと多いとみられる。

練馬消費生活センターの二瓶氏は「広告は業者が金を出して作ったカタログ。頭から疑ってかかる気持ちも必要です」と消費者に自衛を呼びかけている。

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