検証と対策 「遺伝子組み替え食品」ってなあに 安全性危ぶむ声も

1996.12.10 15号 9面

「裸の真実を!(Naked Trueth)」遺伝子組み替え食品をめぐり世界が揺れている。先月13日、ローマ食糧サミットの記者会見場で、遺伝子大豆禁止要求を掲げた三人の女性が裸になり、大豆をグリックマン米農務長官に投げつけた。彼女らは「自分の食べる食物の素性も知らされないことは不当であり、それを押しつけるアメリカに我慢できない」と述べた。安全性を危ぶむ声が高まる中、いよいよ日本上陸も近い。遺伝子とは何なのか? そんなに危険なモノなのか? それでも必要なモノなのか? 人類は一体何をしでかそうとしているのか? 遺伝子組み替え食品をめぐる話題を追った。

遺伝子組み替え食品は、これまでにはなかった新しい食品。自然のままではいくら工夫しても不可能なことを、人為的に生命操作して可能にした食べ物だ。遺伝子操作の結果、特定の除草剤に強いとか害虫への抵抗力が強いなどの性質を持っており、農薬の量を減らす効果が期待される。

国内メーカーも、遺伝子組み替え技術の商品化に動いている。「食物繊維分を多くしたトマトでは、ケチャップやジュース加工の際、熱を加える時間を短縮でき、コスト削減と品質の向上を図ることができる」(カゴメ)、「日持ちのいいトマトを使えば、より完熟したおいしさを味わえる」(キリンビール)などと話している。

今秋をめどに遺伝子組み換え食品が日本上陸するのには訳がある。アメリカ大手化学・農薬メーカーのモンサント社などでは、今年秋に収穫する遺伝子組み替え大豆やナタネを、最大の市場である日本で流通させたいと申請している。

さらにバイオ食品や種苗の販売許可の問題もあり、日本が早く受け入れないと、WTO(世界貿易機関)から貿易障害だと非難される可能性もある。

「このままでは食糧問題の解決になるとは思えない」と科学ジャーナリストの天笠啓祐氏は語る。「人間は自然を支配できると考え、開発を繰り返した結果、公害病やアレルギーの増大に見られる健康被害を拡大させ、地球を住み難くするなど、ものの見事に自然から復讐を受けた。次は生命に介入し、どこまでも改造できると考えている。この先には、もっと大きな復讐が待ちかまえている」

天笠氏らはこのほど「遺伝子組み替え食品いらない! キャンペーン」を立ち上げた。「食卓に出てしまえば、最終的にツケを支払うのは消費者。新しい毒性がアレルゲンとなったり、長期にわたる人体実験が始まることになる。消費者の知る権利を守るためにも、消費者自身が積極的に情報を得て、ガイドライン作りに参加していく姿勢が必要」と呼びかけている。

しかし欧米では、組み替え食品を原材料として使う可能性の高い加工品への不買運動が高まっている。

日本の消費者団体も「これまで人間が食べたことのない食品を長期間食べ続けた場合のリスクは予測不可能。

メーカー側は表示問題に関しては、慎重に構えている。「遺伝子を組み替えたモノと、そうでないモノが混ざって入ってくるので、区別するのが難しい」とし、取り扱いを見送る企業もある。

自社開発の作物を使うカゴメやキリンビールでも「表示などについては消費者の要請を踏まえて検討したい」と話している。

東京農工大学名誉教授・農の会会長の柳下登氏は「われわれの祖先は長い歴史の過程で、人間にとって無毒なモノ、有益なモノを選択し、数十種の食用作物の原種を作り出してきたのである。ところが組み替え作物の野外実験は、せいぜい一〇代しかたっていない」

「にわかづくりの作物の複雑な生体のなかで何が起きているか、それを口にしたときの人体への影響、花粉が飛び散って起こる交雑系統への遺伝的影響などを考えるとあまりにも未知なことが多すぎる」と語る。

日本人はいや応なしに、除草剤耐性の大豆で作った豆腐や納豆を食べざるを得なくなる。

いまや日本の大豆自給率はわずか二%、そのうち七五%をアメリカに依存している。そんな中、除草剤や病気、害虫などに強い「遺伝子組み替え」大豆・菜種・ジャガ芋・トウモロコシなどが、来年早々にも日本の食卓に登場することに決まっている。

厚生省食品保健課は「大豆は油に、トウモロコシはコーンスターチや家畜の飼料に、ジャガ芋はフライドポテトなどに加工して販売される見込み」と話す。そのほかにも菓子、醤油、味噌など食卓への影響は大きい。

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