おはしで治す現代病:骨粗しょう症、緑茶や納豆を多く摂る地域には少ない
「ワタシ88。アナタは?」「へへーん、135よ」「すごーいっ!」。バストサイズではない。今、女性が体重の次に気にする数字は骨密度なのだ。誰しも歳をとれば背骨は曲がるし腰は痛む。しかし人生八〇年の時代となっても骨の寿命は五〇年のまま。つまり、骨の危険な状態が三〇年間延長されてしまったのだ。骨粗しょう症の恐ろしさとともに日本人のカルシウム不足が伝えられ「とにかく女ならとりあえずカルシウムを」とばかりに旋風が吹き荒れている。しかし、カルシウムさえとっていればOKかといえば決してそうとばかりはいえないようだ。
骨粗しょう症がなぜそんなに問題となっているのか、これは老人が寝たきりになってしまう原因の率をみればナットクする。一位脳卒中二位が骨粗しょう症による大腿骨頸部骨折。男女あわせて一〇〇万人といわれる骨粗しょう症のうち年間一八万人が骨折をしているという。普通骨は非常に強いもので、一番強いスネの骨を折るのにはなんと九六キログラムの力がいる。次に強い大腿骨では二七七キログラムの力でやっと折れるのだが、骨粗しょう症ではこうした力が四分の一くらいまで弱まる。健康な状態なら小錦が乗ってやっと折れるぐらいの骨が、自分の体重程度で簡単に折れてしまうのだ。
さて、それでその大腿骨の骨折の起こる率についてだが、昔から牛乳やチーズを食べる習慣があり、一日に一二〇〇ミリグラム(日本人の目標量の二倍)ものカルシウムを摂取するスウェーデンで不思議なことに、日本の倍だという。このわけは日本人と欧米人との骨格の違いにある。股関節のつなぎめの骨が、日本人に比べ長いため折れやすいのだ。
また、大蔵省東京病院折茂肇院長は「緑茶や納豆を多く摂る地域に大腿骨頚部骨折が少ないというデータが出ています。日本人には日本人にあった食習慣を守ることがいかに大切かということがわかります」と語る。
よく『カルシウム貯金は若いうち』といわれるが、いくつになってもカルシウム摂取を心掛け、骨がスカスカになるのを少しでも遅らせることが大切だ。しかし、もはや大きく貯えるには至らないので、三〇歳を過ぎたら自分にはどれだけ財産があり、それをどう使っていけば長持ちするかを考えていく。
骨粗しょう症でとくに骨折しやすいのは手首の骨、肩のつけ根、腿のつけ根。よろけたり転んだりして手をついたり足をひねったりしたときに折れやすいので、家の中の段差をなくし滑り止めや手すりをつけたりする工夫が有効。
また食生活では、リン・ナトリウムを多く含むインスタント食品やスナック菓子、喫煙、飲酒、カフェイン、ストレスなどカルシウム摂取を邪魔するものを取り入れないようにするなどして、骨折を避ける暮らしを心がけたい。