Lucky「噛む」come どっち側の歯で噛む 宮本武蔵の長寿は“両刀”ゆえに?

1996.02.10 5号 18面

利き手、利き足、利き目、利き耳。左と右、人それぞれ得意な側がある。『左ぎっちょ』『左遷』『左まき』など、マイナスイメージの強い左利きだが、アインシュタインをはじめ、天才と称される人にはなぜか左利きが多い。かの発明王、ドクター中松は「右脳は直感や想像力を生むところ。私は発明をするときにはいつもものを左目で見て、左で噛むようにしている」という。

左脳は右半身に命令を下し、右脳は左半身に命令を下す。「左右を比べると右脳のほうが先に低下することがわかっています」と脳神経科医の前原勝夫先生は語る。「散歩に出たまま迷子になってしまう痴呆老人が、警察に保護されると意外に正確に名前や住所を言う、ということがある。これはつまり、名前や住所を記憶する言語能力(左脳の働き)は比較的よく保たれているが、方角や位置を知るような視空間認知能力(右脳の働き)はにぶっているということ。この老人はまったくボケているわけではなく、能力の低下に左右のムラがでてきているのです」。指先の器用さ比べでは、若者よりも老人の方が左右の能力の差が大きいという結果が出ている。

本来右利きの野球選手が左打ちを練習するというのはよく聞く話。そんな両刀使いの第一人者・宮本武蔵は当時としては長生きした人。これは左右片寄りなく脳を刺激した効果かも。とはいえ、子供の利き手矯正と違って、歳をとってから利き側を換えるのは至難の業。私たちとしては、朝食は左で噛んで、昼食は右で噛み、夕食はまた左…といった毎日少しずつの心がけで、ボケ防止と長生きに努めていくしかない。

しかし、これを実現するには両側とも痛まず噛める健康な歯が必要。「俺は、右はほとんど入れ歯。左右使い分けるなんて贅沢言ってられないよ」という人も多いだろうが、そもそも『噛む』という行為自体が身体に良いこと。だから歯の健康は本当に大切にしたい。

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