百歳への招待「長寿の源」食材を追う:「黒ごま」
三百数十年の歴史を誇る北京同仁堂薬店で、長寿用の最高食品を尋ねた。答は黒色食品で、その代表は黒米(皇帝用)をトップに黒ごま、黒大豆・髪菜・椎茸・何首鳥(つるどくだみの根)・黒砂糖などであった。緑黄野菜も良いものであるが、黒色食品はこれに優るものであるという。本草学では補中養気(元気をわきたてる)、益血生津(内分泌を高める)、填髄充肌(脳髄を満たし肌を養う)と高い効用がたたえられ長寿食と呼んでいる。
代表的なものとして、黒ごまと髪菜を紹介しよう。
(食品評論家・太木光一)
黒ごまは中国漢方薬大辞典には黒脂麻の名で紹介されている漢方薬で、単なる食品ではない。また常食すれば不老、仙人食にもなるともみられている。日本には一〇〇〇年前に中国から僧侶によって伝えられた。
日本流にみれば、リノール酸・リノレン酸といった不飽和脂肪酸も多く含み、血管壁の余分なコレステロールを除去する。また老化を防ぐセサモールはビタミンEに恵まれている。
Eの効用は再び見直され、末梢血行障害の改善、中性脂肪の除去、心臓病の予防に効果的とされる。しかし国民栄養調査からみると高齢者の摂取量は減少傾向にあり、老人病抑制の見地からみれば好ましくないとしている。
特に黒ごまは頭髪を黒くする作用もあり、食物繊維も多く体調を整える。この成分をみれば理解されよう。一〇〇g中にカルシウム一二〇〇ミリグラム、鉄九・六ミリグラムと日本人の食生活で摂りにくい成分を非常に多く含み、しかもビタミンB1・B2にも恵まれている。非常に優れた食品といえる。
カルシウムは骨や歯などの硬組織をつくるのに必要で、不足すればこれがもろくなる。また精神安定ミネラルとも呼ばれストレスを防ぐのに効果的。鉄は日本人の食生活にみる唯一の不足ミネラル。不足すると貧血になりやすく疲れやすく物忘れしやすくなる。高齢者ばかりでなくサラリーマンにとっても必需食品なのである。
ごまは品質の良いものほど味がよい。その見分け方は粒の寄っていることが第一で、粒が大きくふくらんで、太ってみるえものが良品である。また良品は香りも良い。古くなると香りを失う。
世界的な産地はインド・中国・タイ・スーダン・ミャンマー・パキスタンなどで、日本は国産がほとんどなくタイやミャンマー・パキスタンなどから輸入している。
極めて優れた食品であるが、欠点は消化の悪いこと。外皮が硬いため、ごま塩などにしてもそのまま素通りしてしまう。このため必ずよくすりつぶすことが大切。こうした理想食として、ごま豆腐があげられる。
僧院のスタミナ料理として古くから食べられているが、何時間もごまをよくすり、これにくず粉を加え弱火で煮込み型に入れて固める。力を入れ時間をかけるほど味が良くなるが、油がでてドロッとなるまで、手間がかかる。最近では僧院の味としてパックのごま豆腐がスーパーなどで販売されている。長寿・美肌・骨強化・精神安定のため愛用をすすめる。