元気・長寿への招待 ヘルシーメニューの素材を追って:すっぽん
すっぽん料理は高級料理として知られている。しかし昔は下賎の食べ物として低くみられていた。川亀・泥亀などとよばれ河川・沼地などでたくさん獲れたものである。ところが乱獲や汚染によって、ほとんど姿を消し自然のものは絶滅に近く養殖が主流と変った。
すっぽんは水陸両棲の爬虫焼で日本には一種類だけで本州・四国・九州の淡水域に分布。東京や九州ではすっぽんでよぶが関西での呼び名はマル。こは中国広東語の団魚が語源となっている。
甲長は二〇~三〇センチでほぼ円形で、中央部は石灰質が沈着してやや堅いが、周縁部は肉質で柔らかである。中国南部では五〇~七〇センチに成長するが、インドネシアでは甲羅一メートル、堅さ三〇キロにもなる。
一般的に背甲が青録色のものが最上等品、ついで赤褐色のもので、暗黒色のものは味も落ちる。雄より雌の方が美味。
完全に成熟するまでに二〇年以上を要す。亀は万年といわれるが、すっぽんも長寿で一〇〇歳をこえるものもみられる。
調理は生きたものを、首の根元の骨に包丁を入れ体を逆さまにして生き血をコップに受ける。皿は貴重な栄養剤で、酒に混ぜたり、あるいはそのまま飲む、補血剤として優れ回春効果も期待される。
すっぽんは肉・内臓(膀胱と胆のうを除く)などすべて食べられる。特に冬期の味が最高としているが、中国では木犀の花が香る秋の桂花甲魚が絶品としている。
すっぽんスープはトロッとしてゼラチン分の多いのが特徴。これがコンドロイチンである。コンドロイチンとは細胞と細胞をつなぐ糊のような役目をする。このコンドロイチンが不足すると、細胞に水分と栄養が不足して、酸素の補給が少なくなる。老廃物の排泄もできにくく、皮膚は生気と活力を失い、つやもなく老化する。すっぽんは若さを保つスタミナ食品とよべよう。
中国の金持ちたちは年とともに精力が弱ってくるのに、ますます若い美女を抱えるのでスタミナ維持のため毎日のようにすっぽんスープやつばめの巣を愛用したといわれる。
すっぽんの成分をみれば一〇〇グラム当たり六七キロカロリー。たんぱく質は一四七グラムと低カロリー高たんぱく食品である。無機質ではカルシウム八七〇ミリグラム、鉄六〇ミリグラム、ビタミンではB1とB2が特に多く、並みのヘルスフードより、すっぽんの方がはるかに優れている。
薬膳的にみるとすっぽんは性味は平甘で、肝腎を強め衰弱による発熱を散じる効果があり肺を患う人にとって養陰の極上品とされ、古来からの処方にもよく出てくる。そして不老長寿食とみている。
食べ方で日本はすっぽん鍋・すっぽん雑炊、吸い物など。中国では枸杞と山薬(山芋)、黄〓を入れてスープにして常飲すると効果抜群。長寿を楽しむのは金のかかることである。
(食品評論家・太木光一)