元気・長寿への招待 ヘルシーメニューの素材を追って:松の実

1995.11.10 2号 14面

木の実は脂肪分とたんぱく質が多く、コレステロールゼロ、自然食品・健康食品として人気が高い。松の実はこの代表である。

松の種類は世界で一〇〇種近くあり、食用となる品種は朝鮮五葉松とよばれている。深山で自生し日本でも僅かに産出するが、韓国・北朝鮮・中国東北部・シベリア・スペイン・イタリア・メキシコなどで多産する。

松かさが大きく長さ一〇~一五センチほど、中に一センチぐらいの種子があり、他の松の実にみるような翼はない。堅い灰茶色の殻におおわれ、これを割ると、白い粒の果肉がとれる。

口にすると単味な味の中に意外と脂肪分が多く、歯ざわりは柔らかく、心持ちベタつくような感じである。成分はカルシウムと鉄に恵まれ、リジン・トリプトファンなど必須アミノ酸も多く、ナッツ類の中では王者級。

樹齢一〇〇〇年を誇る老松も、もとは一粒の松の実にすぎず、このたくましい生命力と不老長寿を結びつけて仙人食視されている。たべすぎると鼻血が出るほど精が強く、スタミナ食としてファンがみられる。

中国では松子仁とよび延年の仙果として珍重。唐時代の皇帝が有名な木草学者をよんで延年不老術をたずねた時松子仁の常食をすすめたという。五臓を養い、肌を潤し、堅くなりがちな便を柔らかくし、老人の理想食とされている。

食べ方も多く八宝飯に松の実を多用する。松子酪として松の実をよくすって、しる粉状にして氷砂糖で甘くする。消化吸収がよく、病後の人や虚弱者や老人によい。またあんとして蓮の実とともに月餅にも用いられている。

松の実を最も上手に利用しているのは韓国で精進料理や宮廷料理に数多くみられ、この代表はチャッチェクとよぶ糯米と松の実でつくった粥である。口当りはサラッとしてなめらかで薄味、酒の前に食べれば胃を傷めず、美しい肌をつくるので美容食ともなる。

ヤックシックは栗・くるみ・松の実などをたっぶり入れ黒砂糖と蜂蜜で味付けした赤飯風の糯米ご飯である。上に肉桂や朝鮮人参の粉をふりかける。身体によいので薬食と書かれ、お使いや法事などの行事食としてつくられる。

この松の実は欧米でも人気が高く、イタリア語ではピノキオという。有名な童謡の主人公と同じで子供達もよく知っている。酒の肴や菓子原料に使用。アメリカでも松の実はヘルスショップで販売され、数多くの自然食品の中では成分が優れ、たべやすいとして売れ筋の一つ。

松の実は毎日数粒ずつ常用することが大切で、大きな薬効が期待される。決して食べすぎないように。何時しか肌がつややかになり体調も良くなってくる。数多くの成長因子が含まれ、現代の栄養学ではまだ解明されていない。不老長寿の秘薬も含まれていよう。

(食品評論家・太木光一)

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