フランス料理 価格の見直し/サービス向上 本物指向で集客力キープ
客単価の高いフランス料理店が苦戦を強いられている。客単価二万円、三万円、バブル時代は抵抗のなかった金額だが、ポストバブル時代においては、利用者の意識が大きく変わり、単価の高い店は敬遠されるようになってきた、というのがその背景だ。
とくに、企業の宴会や接待需要の激減、さらには個人消費の落ち込みによる低価格志向という状況にあっては、単に単価の高い店は営業がふるわないということだ。
しかし、こういった厳しい市場環境の中でも、価格の見直しやサービスの向上、あるいは徹底した本物志向といった営業戦略で、集客力を発揮している店も少なくない。
上野精養軒は創業一二〇余年、わが国におけるフランス料理の草分け的存在の店だ。
店は上野本店ほか、お茶の水、池袋、新宿などに二一店舗を出店しており、知名度の高さは強調するまでもない。しかし、知名度が高いといっても、やはりポストバブル時代は厳しく、客数、客単価ともに減少している。
だが、同店の場合は消費低迷を反映して、ものみな「低価格化」傾向の中で、こういった流れには同調せず、安価な食材仕入れに努力するほか、適正価格でのメニュー提供とサービスの質的向上に努めてきた。
この結果、平成6年上半期(2月1日~7月31日)の売上げは、落ち込みに歯止めをかけて二九億円、中間利益九〇〇〇万円を確保した。
下半期も売上げで三〇億円前後をクリアできるとみており、トータルでは対前年比一%前後の伸び、あるいは同額程度の売上げが確保できると期待している。
九五年度については、引き続き既存店の見直しと効率化に取り組むほか、昨年7月にオープンした新宿(パークタワー)店(店舗面積四七坪、客席数七二席)を軌道にのせ、業績向上に寄与させる考えだ。
銀座レカンはオープンして二〇年の歴史だが、「ミシュラン」のランキングでいえば、三星クラスのレストランで、利用客は目的客でアッパークラスが大半を占める。
店舗面積約六〇坪、客席数四五席の中型店だが、料理はベテランシェフが作る本格的なものだ。
ランチメニューコース五〇〇〇円、六〇〇〇円、一万円、夜は一万五〇〇〇円、二万円、二万五〇〇〇円のコース(ディナー)料理が看板メニューだが、この店の場合もバブル時代に比べれば、集客力は低下している。
しかし、いずれ景気が回復して消費も高まるとみているので、低価格志向には同調せず、クオリティーの追求で収益力の向上に努力している。
客単価昼六〇〇〇円以上、夜一万円以上だが、夜の客回転はやっと一回転をクリアするといった状況だ。しかし、景気は必ず回復するとみているので、新年度においても基本に忠実に安易な妥協はせず質の充実に力を入れて、業績をキープしていく考えだ。
グリルクレドールは都ホテル(東京・白金台)の直営店で、オープンして一五年になる。この店も例外なく長引く不況で、厳しい状況にある。
とくにこの店は知名度が低いということもあって、集客力が二、三割ダウンした。このため九八席あった席を二割減らして七六席に縮小、客席フロアにゆとりをもたらすという考えで、空間の付加価値をアピールすることにした。
客数が減って空席が目立てば、店の雰囲気が悪くなる。席数を減らして空間にゆとりを出せば、それだけ店に対する客の印象は高まる。
メニューはコース料理が五〇〇〇円、六〇〇〇円、九〇〇〇円、一万円の四種。アラカルトは主力メニューで四〇〇〇円~七〇〇〇円。
これは二、三割引き下げたポストバブルの料金で、この料理の「低価格化」と店の雰囲気で客離れに歯止めをかけて集客力をキープすることに成功した。
新年度において決定打はないが、ホテル自体への集客力を高めるとともに、料理、サービスの質的向上をはかって、リピーター客を増やしていくことが、大きなポイントだと考えている。
消費不況で高単価のフランス料理は、最も大きく影響を受けた業態だが、一流店には目的をもって来店する客も多い