メニュートレンド:冷やし天丼 かけだしをジュレにしてひんやりと
ここ数年、この時季になると、冷やしラーメンや冷やしカレーなど“冷やし”メニューが人気だ。テレビや雑誌などのメディアでも、食欲の落ちる夏場にお薦めのメニューとして特集する。「串天ぷら 段々屋」では、すでに9年前に冷やしメニューに注目し、夏季限定メニューとして「冷やし天丼」を開発。メディアで紹介されるにつれて、類似メニューも見られるようになったが、“元祖”冷やし天丼はやっぱり強い。
●夏場の売上げ増メニュー
揚げ物をメーンとした店だと、夏場はどうしても売上げが落ちる。その対策として考案されたのが「冷やし天丼」だが、当初は炊きたてのご飯を氷で締めて、揚げたての天ぷらをのせ、そこに冷たいだし汁をかけたものだった。
「単なる思いつきだったので、今思うとメニューとしての完成度は低い。だし汁をかけるだけだと、天茶のようになり、夏場に食欲をそそるような仕上がりではなかったですね」と語るのは小林祐介店長。
そこで改良が重ねられた。画期的な改良点が、だし汁をジュレにしたこと。ジュレなら天ぷらの衣がしんなりせず、揚げたてのサックサクの食感が楽しめる。さらに、ジュレなら見た目の清涼感も満点だ。
だし汁をジュレにする発想はすぐに生まれたが、問題はだし汁とゼラチンの割合。ゼラチンが多すぎると固くなりすぎ、少ないと固まらない。試行錯誤の末、ちょうど良いあんばいのプルプル状に固まり、口の中で溶ける絶妙の配合を割り出した。
ライスにも改良が加えられ、ただの白飯から刻みミョウガを混ぜ込んだものにバージョンアップ。「最初は酢飯と刻みガリも考えたんですが、酸っぱいものと天ぷらはどうも味が合わなくて、ミョウガにしました。夏が旬のミョウガは、夏季限定のこのメニューにぴったりですし……」と小林店長。
食べ方もジュレで途中まで食べたら、冷たいだし汁をかけるといった2段階で楽しめるようにした。
最後に盛り付け。ジュレを手前に盛るのが鉄則。「店のスタッフには、『どんなに忙しくても盛り付けは手を抜くな』と言っています。SNSにアップされる写真の影響は大きいですから」と、盛り付けまで考え抜かれてこそ、集客力のあるメニューになる。「冷やし天丼」はランチの約3分の1の注文を占め、夏場の売上げ増に貢献大だ。
◆店舗情報
「串天ぷら 段々屋」 所在地=東京都新宿区西新宿1-14-2/開業=2007年2月/営業時間=昼:月~土 午前11時30分~午後2時30分、夜:月・火・土 午後5時30分~11時(LO10時30分)、水・木・金 午後5時30分~翌午前0時(LO11時)、日 午後5時30分~10時(LO9時30分)、不定休/坪数・席数=1フロア12坪×4フロア、86席/1日平均客数=昼約120人、夜約100人/平均客単価=昼約840円 夜約4000円
◆愛用資材・食材
「淡口醤油」 丸亀醤油(香川県丸亀市)
ジュレとかけだしの必須調味料
だし汁は干し椎茸、鰹節、昆布でだしをとり、薄口醤油とみりんで調味する。「ジュレはだしをとるところまで同じですが、ジュレに合うように薄口醤油をだし汁よりも若干多めにしています」と小林店長。薄口醤油の香りと干し椎茸のうま味が見事にマッチしている。
規格=18L