きらめいて今大阪で超人気の大型外食店 2新ウオーターフロントで展開
今、大阪で話題のトレンディー・スポットといえば、九四年4月14日にオープンしたATC(アジア太平洋トレードセンター)と、9月4日に開港した関西国際空港の二ヵ所。いずれも大阪湾を借景としたウオーターフロントの新名所で、神戸のハーバーランド、大阪・港区の海遊館を中心とした天保山地区と結ばれる、大阪湾岸の新アメニティーゾーンである。この両地区で人を集めているのが、関西でこれまでほとんどみられなかったカフェテリア・タイプの大型外食店。そして、昨年から大阪料飲経営協会(ORA)が、国際化時代に対応して認定制度を実施している国際親善外食店。そこで、ATC、関西国際空港で、この二つの資格を満たす店の現況を探ってみた。
大阪市住之江区の南港に、九四年4月にオープンしたATCは、六万八〇〇〇平方メートルの敷地を延床面積三三万五〇〇〇平方メートルの建築物で埋めた、世界でも最大級の商業施設。建物は大きく区分して、国際卸売マーケットのITM棟と、アメニティーゾーンのオズ棟に分けられている。
ITM棟こそ、不況下のオープンということもあって四〇〇社の入居スペースに対し約四割の一七〇社(うち海外テナント一一〇社)しか入居していないが、オズ棟には飲食・物販店五九店が入居し、オープン当初からフル稼働の状態で非常な賑わいをみせている。
オープン当初は、ATC全体で年間来場者は五〇〇万人程度ではないかと予想されていたが、オズ棟の各イベント施設やそこでの催しや、建物と一体となった大規模海浜緑地が海辺の新名所としてクローズアップされ、四ヵ月後の8月中旬には五〇〇万人を突破し、ディズニーランドを超える集客力が注目を浴びた。秋後半以降、来場者は減っているものの、この春には西日本一の高層建築物となるWTC(大阪ワールドトレードセンター)がオープンするのをはじめ、関西の国際交易・交流ゾーンとして、交通アクセス網の整備なども進められており、当面は毎年のように話題を欠かない地区として、集客力の底はまだみせていない。
この中にあって、九四年夏に非常な賑わいをみせたのが、「ベイテラスガーデン」(シャロンインターナショナル(株))。同店は、ATC全体のほぼ中央部、オズ棟北館の中心にある“滝のある広場”を取り囲む型で設けられた飲食スペースは八八〇平方メートル、二六六席の広さで、全体的にはATCのパブリックスペースとして一〇ヵ所の出入口は、営業中は常にフリーゾーン。この中に、シャロンインターナショナルが、チャイニーズフード・マンダリン、和食処・天喜、ハンバーガー&ドリンク・シモンズ、ステーキのザ・シャロンの四店を配し、カフェテリア方式を織り交ぜた多国籍飲食ゾーンを作り出している。
四業態を売上高順にみると、一位がマンダリンで、平均客単価九〇〇円。売れ筋は唐揚げ・焼そば・焼めしなどのコンビネーション(七五〇円・八〇〇円)とラーメン(四五〇円)。二位がシモンズで平均客単価五〇〇円。売れ筋はシモンズバーガー二五〇円、テリヤキバーガー三三〇円。三位は天喜で、平均客単価七〇〇円。売れ筋は五目セイロ飯とうどん(九〇〇円)などのセット類。四位のザ・シャロンは平均客単価一〇〇〇円で、売れ筋は八〇〇円からのハンバーグプレートやカレー。
この四業態で、夏場の土・日曜には屋外にもテラス席一二〇席を配したフル回転で日商五五〇万円の売上げを記録している。
客層は、若いカップルからファミリーまで満遍なく取り込んでおり、国際親善外食店として外国人が、室内では日本一とされる店内中央に落ちる滝をバックにラーメンをすする姿がみられるのも特色。
松浦滋マネージャーは現況について「夏場は、一日五五〇万円を売上げ、二五人体制でフル稼働を続け、パンク寸前の状態だったが、秋後半以降はウオーターフロントの弱味か、ATC全体の集客力が落ち客数は大幅に減っており、ATC全体として、各種イベントと連動させてどう人を集めるかが課題。当店としてはこの広いスペース内の運営でどれだけ人を減らし、なおかつサービスを維持できるかがポイント」と語っている。
一方、九四年9月4日に開港した関西国際空港は、立ち上がりこそ、当初予想から大きく減少した発着便数などから、空港島全体が本番前の試運転といった空気もみられたが、今では臨時便なども順調に増加し、関係者全体に明るさを増しているのが現状。
この空港ターミナルビル内にある二七店の飲食店にあって予想以上に気を吐いているのが「関西国際空港ロイヤルキャフェテリア」(オージー・ロイヤル(株))。
同店は、二七店中最大規模の一五一坪の店内に二二〇の客席を配したカフェテリア。メニューは約一〇〇種で、メーンはポーク、チキン、ビーフ、中華、スパゲティー、カレーなど通常一〇種類のアントレ。ただ、チキン甘酢あんかけ・エビチリソースに焼めしか焼そばといった組合わせによるバリエーションも豊富で、顧客の多彩な要望に十分応える体制になっているのが大きな特徴。
平均客単価は、一三五〇円でスタート、オープン当初の9月は一五〇〇円弱だったものの現在では、計画通りの一三〇〇円台で落ち着いている。月商の方は、当初予定していた七五〇〇万円を軽くオーバーし、9月から毎月一億円を上回る実績を残しており、当初の「関西ではなじみの薄いカフェテリア方式がどう受け入れられるか」といった杞憂を完全に吹き飛ばしてしまった。
営業時間は午前7時~午後10時で、これを社員一五人、パート八五人のスタッフが二~三交替でこなしている。来店客は、国際空港内の繁盛店として、当然のことながら外国人も多いが、国際親善外食店として荒井義信支配人以下の英会話の出来るスタッフに加え、全員がボディーランゲージも交え対応、ここまで大きなミスがないのが自慢。
荒井支配人は現況について「カフェテリアは、大型施設でないと特徴が発揮できないので、関西は東京より大きく立ち遅れており、当社としても初の業態で、当初は不安もあった。しかし、メニュー価格を極力抑え、リーズナブル感を強調するなどの努力の結果、毎月、当初予想を上回る成績を収めている」と語り、今後の課題としては「カフェテリアシステムは、お客さんにとってメニューの選択は楽しいが、席に行くと冷たく感じられるのが欠点。私どもとしては、お客さん・ゲストへのトータルサービスという観点から、追加注文の問題も含めて、システムの質的向上を図っていく必要がある」としている。
空港島内は、高額な水道料金、普通乗用車で往復一七〇〇円もする連絡橋の通行料金など、店舗運営の基礎経費がかなり高いため、収益面では都心部の立地と比較してもかなり条件は悪いが、予想以上の売上げがこれをカバーしているのが同店の現状。関西国際空港そのものは、今後とも増便は確実なだけに、当面、売上げの減少の心配はなさそう。ただ一つ、気がかりな点があるとすれば、空港見学者の動向。出来て間もない空港ということで、これまでのところ一般見学者の数がかなり多く、これがターミナル内の飲食店を潤しているが、半年なり一年たった時、これがどうなるのかは多少気になるところ。
◆国際親善外食店
外食店における外国人に対する接客サービスおよび外国人客への対応能力の向上を目指し、「国際親善外食店認定事業」として、平成4年12月に農水省から、大阪料飲経営協会(ORA=大阪市西区、06・536・5575)が事業認可を受けたもの。
事業は、全国の外食店に呼びかけて、英語での接客など、一定基準をクリアした店を「国際親善外食店」として認定し、外国人が気軽に入れる飲食店を増やし、外食産業の国際化への対応と外国人客の誘致・宣伝による地域活性化、外食産業の発展に資することを目的とし、全国統一基準として実施しているもの。
九四年末現在、北海道から兵庫県まで、全国三六一人が英語と接客サービスの資格試験を通り「国際フードサービス士」の資格を取り、同じく北海道から兵庫県までの一三四店舗が認定され「国際親善外食店」の認定看板を掲げている。